株式会社ブイエフブイスタジオ 代表取締役社長:エンジニア

競 紀行

レコーディングエンジニア 競 紀行氏が語るECLIPSEの魅力

1994年のデビュー以降、数多くの名曲を生み出し、大成功を収めているロックバンド『GLAY』。そのGLAYをエンジニアという立場でサポートしてきた競 紀行氏には、ECLIPSE Home Audio Systems発売当初よりその『正確』なサウンドを高く評価頂いてきました。

今回、GLAY最新作のレコーディングを終えられたばかりの競氏にその魅力を語って頂きました。

今日はよろしくお願いします。ご出身は北海道とお聞きしましたが、どうして東京に?

競:最初からエンジニアになるためです。北海道の高校を卒業して、東京の専門学校に入りました。元々、機械いじりが好きで、中学、高校と放送部だったんです。音楽も好きだったんで、プログラムを無視して、昼休みの放送に好きな音楽をかけてて。
それで、高校で進路を考える時、先生からは大学に行けといわれたんですけど、、、どうせやるなら、好きな音楽に関わる仕事で機械が得意ということで、エンジニアになりたいと決めました。バンドでギターはやってましたが、それは遊び程度のレベルでしたね。

専門学校の後、すぐにVFVスタジオに入社されたのですか?

いえ、最初は伊豆の下田のリゾートスタジオに入社したのですが、半年で潰れてしまって。ちょうどそのとき、たまたま、知り合いのエンジニアさんの紹介で、一口坂スタジオへ。そこでの仕事で佐久間さん(=佐久間正英氏)とお会いして、一口坂スタジオを辞めたときに、『ウチに来ない?』と佐久間さんから誘ってもらい、VFVスタジオへ来ました。

こちらに来られてからは、主にGLAYさんのレコーディングを担当されて?

そうですね。主に佐久間さんがプロデュースされた作品を担当してました。佐久間さんからの仕事以外では、浅井健一さんや、氷室京介さん、馬場俊英さんを担当させて頂きました。個人的に一番思い出深いのは、CUNE(=キューン)というバンドで、解散しちゃいましたが、今でも大好きですね。実質、僕のデビュー作ですし。他にも、ここのスタジオは、藤井フミヤさんや布袋寅泰さんにも使って頂きました。

それでは、レコーディングのお話を伺いたいと思いますが、まずは、レコーディング時のこだわりについて教えて下さい。

エンジニアとしての自分のモットーは、『作業をスピーディにこなす』ということですね。つまり、何か、こういう音を出したいということになったとき、それを表現できる、音として素早く実現する事を常に考えています。アーティストが思い描くイメージの音を現実化することもあれば、こんな音が出来るよ、とこちらから提案することもあります。

そういうことを含めて、録音現場の空気というものが大事なんでしょうね。

言い換えれば、レコーディング現場の良い環境作りといえますね。でも、ほんと、僕、あまりしゃべるのが得意じゃなくて、逆にエンジニアに向いていたのかも。しゃべらなくても、音で自分の思っていることを表現すればいいんで。

なるほど。では、具体的にどのような音を目指されていますか。

あたりまえの話なんですが、いい音であることに越したことは無いですよね。一番伝わりやすいですし、わかりやすいですし。では、『いい音とは何?』ってことになるんですが、これに決まった答は無いと思うんですけど、でも、このECLIPSE Home Audio Systemsに出会ってから、一つ思うのは、いい音の普遍的なものっていうのは『生音に近い』ということで、それは、古今東西、どこへ行っても、いい音と言われるものなのかなと思います。
より詳しく言うと、聴いてる人がわかりやすい音で音楽を表現するということを自分では気を使ってます。言葉でいうと、音の住み分けとか。楽器それぞれの音域が分かりやすく、明瞭に楽器をイメージさせることかな。

そういう音作りのために、マイキングやEQなどでのこだわりは?

まず、自分で気をつけていることは、最初にしっかりと生音を聴くことですね。ドラムを録るでも、上からと横からでは、聴こえ方がぜんぜん違いますし、マイクは正直なもので、自分が聴いたポジションから音を拾えるようにマイクをセッティングするよう心がけます。EQやコンプをかける前に、まずマイクをずらして、自分の思う音に近づけるというのが大事ですね。

確かにGLAYさんの作品を聴かせていただくと、ボーカルの生っぽさ、定位の感じが、ナチュラルを意識されているように感じますね。

そうですね。ナチュラルというか、音の住み分け、つまり楽器の住み分けには意識していますので、聴きやすくなっていると思います。ボーカルも言葉がちゃんと伝わるようにしています。曲毎のバランスによって、ギターなども録り方を変えますが、基本的にはいい音が出てれば、エンジニアがイジる必要ないですから、あまり加工はしないですね。加工する時は、意図がある場合か、もしくは、録りがよっぽどダメなときぐらい。(笑)
ダメということはほとんどないので、たとえば、曲の中で、エフェクトをかけて、飛び道具的に変化をつけたいときとかですかね。ナチュラルということについて言えば、生音を正確に再現出来るスピーカーがあるからこそ、僕がナチュラルな音にこだわれるわけで、これはイクリプスのおかげだと思っています。

レコーディングエンジニア 競 紀行氏が語るECLIPSEの魅力

今、メインに使っている機種は?

TD510がメインです。もちろん、TD712zもいいんですけど、僕の耳には音像の大きさがTD510がちょうど合うんです。音の判断基準というものに。そんな大音量で鳴らすわけではないですし。あと、ECLIPSE Home Audio Systems TD307IIの音像の見え方には驚きました。正直、ミックスの時にはだいぶ助かりました。ミックスは音決めというよりもバランス決めが重要なので、TD307IIで決めてしまえば、他のスピーカーで聴いても、問題なく良く聴こえました。

イクリプスユーザーとして、音楽の作り手ではなく聴き手としてはいかがですか?

自宅でも508PAを使ってますが、おもしろいのが、とても遠くまで音が届くことです。そして、音のバランスというか、音のイメージがスピーカーの前でも、隣の部屋でも同じように聴こえることも驚きです。家庭用ならTD508IIで十分ですね。音が明瞭で、会話もさえぎらないですし。

なるほど、ありがとうございます。もう一度エンジニアとしての話に戻りますが、これからの夢ややってみたいことは?

おかげさまで、エンジニアとして、このようなスタジオを持つことが出来ましたが、夢としてはもっと大きなスタジオを持つことで、いろんな人が集まって、わいわいやりながら、上質な音楽をつくっていけるような会社にしていきたいと思います。あと、個人的には、エンジニア・プロデューサーと言われるような仕事が出来るようになりたい。大好きなエンジニアで、Tom Lord-Alge(=トム・ロード・アルジ)という世界的に有名なミキシング・エンジニアがいます。僕も彼のようなミキシング・エンジニアを目指していて。ミキシングがエンジニアの一番の醍醐味だと思うんです。最終的に音楽を完成させる作業じゃないですか。彼のように曲の持っている雰囲気とそのアーティストの魅力を150%引き出せる人。一番あこがれて、大好きな人です。彼のような仕事がしたいですね。

最後に、競さんのオススメのソフトを教えて下さい。

今挙げたTom Lord-Algeがエンジニアリングをしている、 Mick Jaggerの『Goddess in the Doorway』というソロアルバムが僕のバイブルの1つになってます。 このCDを何度も聴き返して研究しました。内容もとても素晴しい作品です。

本日はどうもありがとうございました。新作の発売を楽しみにしています。

profile

競  紀行 (株式会社ブイエフブイスタジオ 代表取締役社長:エンジニア)

1975年3月5日生まれ  北海道札幌市出身。PCM Complete、一口坂スタジオを経て、ドッグハウススタジオにてチーフエンジニアをつとめる。06年9月、株式会社 ブイエフブイスタジオ 代表取締役社長に就任。ロック、ポップスを中心に多くのアーティストを手がけ、中でも、GLAYの作品では、ここ数年間、全てのレコーディングを担当。最新シングル『Ashes.EP』が10月31日に発売予定。