Vol.01スピーカーが存在しない音/オノ セイゲン ( レコード制作家、作曲家 )

2枚のアルバムはどちらも2000年にベーシックトラックが録音されたものです。ほんの7年前。「マリア・アンド・マリア」は、ニューヨークでスタジオライブDSD録音。「アット・ザ・ブルーノート東京」は、東京南青山のブルーノート東京での、私のアンサンブルとしての日本初のライブを収録したものです。この2枚のアルバムはようやく2007年にECLIPSE TD 712z、ECLIPSE TD725swおよびECLIPSE TD307IIをリファレンスのモニター・スピーカーとしてミキシング〜マスタリングが仕上げられたのです。

なぜECLIPSE TDシリーズスピーカーを選択したのですか?

このスピーカーは他のどれよりも正確に音を再生してくれます。色も味も特徴もありません。カラーリングのない音。それは、そこにスピーカーが存在しない音。でもスピーカーがないと音になりません。もちろんスピーカーのキャラクターというのは、オーディオの楽しみのひとつですが、それはあくまでリスナーの立場での話です。音楽を作る立場では、スピーカーでデフォルメされることなく、音声信号を正直にあるがまま再生されることが最も重要なのです。ミキシングでは無意識のうちにもほんの0.1dB(デシベル)の差をつめていく作業ですから基準となるモニタースピーカーで音がゆがめられていては話になりません。今年登場したTD307IIに至っては、小型で音量こそでませんが、その分振動板は軽いわけでインパルス応答特性はかなりいいでしょうね。ノートPCでは低音は感じませんが、TD307IIはしっかり見えます。

一方で、リスナーの立場ではいかに「自分の好きな音」=「いい音」で音楽が聴こえてくるかが重要なのです。録音現場や実際に楽器がどんな音色で発音されているかよりも、また作曲家がどのような意図で音楽を作ったか、そんなことより自分の部屋でどれほど期待するイメージに近づけるかが、スピーカー選択の基準となります。音楽の種類以上に千差万別です。どれを選ぶかも全くもってリスナーの自由なのです。オーディオショップで店員さんに相談したり、なぜスピーカーが変わるだけでこんなに印象が変わるんだろうと思いませんか?私もALTEC 9846-8AというA7のスタジオモニタータイプの名器を持っています。ALTECのホーンの音で再生してくれます。どんな音楽でも、どんな録音でもALTECの音になります。ジャズをこれほど楽しめるスピーカーはありません。ただし原音忠実ではありません。シンバルやピアノはその楽器の前で聞けば、決してALTECのような音はしていません。

私は音楽を創る立場ですから、つまり演奏して音が生まれる空間と、それをマイクで捉えてレコーディングして再生された音が同じでないと困るのです。まったく同じにはなりませんが、限りなく近い音を求めていくと、ひとつの答えがECLIPSE TDシリーズスピーカーTD712zです。ミキシングという作業を仕上げるために必要なモニターとしての精度は、あえて名前はいいませんが1本150万円もするプロフェッショナルモニターに匹敵します。レコーディングの最初のステップとは、ミュージシャンの演奏を聴こえないくらい繊細な部分までも、あるがままに記録し再現できることなのです。その音楽をパッケージとして提供するからには、リスナーのみなさまには最大限高品質に届けたいという想いから、スピーカーにより判断が少しでもぶれるようでは困るのです。リスナーはご自分のどんなスピーカーで聞いてもらっても、それなりに楽しんでもらえます。とは言え、コンテンツはあくまで音楽ですから、音質がよければ「いい商品」という理屈は成り立ちません。遠回しな説明ですが、お好きな音楽をECLIPSEで聴くということは、限りなく音楽が生まれた空間に近づけるとも言えます。あえて、ECLIPSEのネガティブ面を述べると、「悪い録音」は本当にひどい音で聴こえます。利点でもありますが、演奏の細部まで隠さず見えてしまいます。ソフト選びには特にこだわってください。

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