日本を代表するヴァイオリニスト"古澤 巖"さんと我々の出会いは2000年11月に開催されたオーディオエキスポ会場である。その時に我々のスピーカーの音とコンセプトに接して以来このスピーカーを使った新しいアイデアを思いつかれ、現在もその案をあたためていらっしゃるとのこと。
今回は、古澤さん専用のシアターでお話を伺った。
出会い
僕が初めてこのスピーカーを目にしたのは昨年のオーディオエキスポ会場。
葉加瀬太郎さんらと共にスタートした「ヴァイオリンの夜」、外国のクラッシック系音楽家3人を日本に迎えて活動してきた「タイフーン」、ブラジルのアサド兄弟(*)とのトリオと、いつも新しいスタイルを取り入れてきたが、丁度このスピーカーに出会った時は次なる試みを考えていた頃だった。
僕はクラッシック系ということもあり、今まで年間百何十回という大ホール演奏やそれを想定したレコーディングを行ってきているが、そのような活動を通じて感じていたのは、大ホールになればホールの響きが全体の音を支配してしまい、楽器の側にいるとハッキリと感じる振動,空気感,肌に触れるような感触などの良さが、観客席に座ってみると薄らいでくることである。
そんなことを感じていた時にこのECLIPSE TDシリーズスピーカーと出会い、これまでと全く違うコンセプトで開発されたスピーカーと、その開発プロジェクトの生立ちに共感を覚え、これを使った新しいスタイル案が湧き起こった。それは至近距離で振動を感じられる専用の小さなシアター(小劇場)をスタートさせたいというプランである。
思いついたアイデア
このプランについてもう少し説明すると、予め相棒として自分の演奏を録音しておいたものを本番にこのスピーカーで再生し、これと自分の生演奏とが協奏する。
僕はスピーカーと重ね合わせて演奏することについては、以前シンセサイザーやコンピューターを使って演奏される東儀秀樹さんと一緒に活動をしたこともあるので、抵抗はない。
このスピーカーを使ってみたいと思うのは、自分が演奏する小さなシアターで、自分の生の音とスピーカーの音とが上手く混ざり合ってくれるので、まるで自分が二人で演奏しているかのような状況を創ってくれるからである。
そうすれば、楽器本来の味わいと協奏の楽しみを実際に体で感じてもらうことが出来るんじゃないか、本来の音楽の楽しみはそれだったんじゃないかと考えたわけである。
ECLIPSE TDシリーズスピーカーへの期待
このECLIPSE TDシリーズスピーカーはこれまでのスピーカーと違って耳への圧迫感がなく、細かな音が手に取るように分かる。僕だけじゃなくこのスピーカーを試された録音現場にいらっしゃる方には、今まで自分達が録音したものを再生したときに相当違って聴こえてくると思う。
このスピーカーのように良くも悪くも演奏,録音をストレートに再生してしまうというのは、スピーカーとしておそらく初めてで、このスピーカーのような再生が実現できれば我々の方で演奏,録音を納得のいく形に近づけることが出来る。
レコーディング時は僕にとってもっとも勉強になる瞬間で、レコーディングを終えるたびにレベルアップしているのを感じる。そういう意味で、このスピーカーと作業をして自分がどこまで上にあげてもらえるかという期待感がある。
夢
将来はブロードウェイミュージカルや劇団四季等のようなシアターをヴァイオリンとスピーカーで行うという、これまで世界に無い新しいスタイルを創ってみたいと考えており、そういう夢をこのスピーカーと一緒になって作り上げていければと思っている。