シンガーソングライター

畠山 美由紀

発音の微妙なニュアンスだけでなく、「わびさび」まで

今回は、シンガーソングライター畠山 美由紀さんのご登場です。

ニューアルバム「歌で逢いましょう」のマスタリングをオノセイゲンさんのサイデラ・マスタリングのスタジオで行われたところ、マスタリングで使われていたECLIPSE TD-M1の音を気に入っていただけたというご縁で実現しました。

今回のインタビューは、そのサイデラマスタリングスタジオにて、オノセイゲンさんにインタビューワーをお願いして沢田穣治プロデューサーにも同伴頂き、あらためてTD-M1でニューアルバムをお聴きいただきながらお話を伺いました。

オノ:ぼくも畠山さんのファンなので久々にお会いできるのも楽しみにしていました。昭和の楽曲、そのアレンジと演奏、そして同録のうたも素晴らしいですね!そして中村さんの録音とミックスが完璧で、ぼくはマスタリングでなにもやることなくて、インタビュアーやらせていただくことになりました。今回、CDとハイレゾ、さらにLP2枚組まででますから、それぞれのメディアフォーマットに合わせて、ほんの0.3dBづつくらいイコライジングを変えたかな。オーディオ評論家にも踏絵のようなレコードになりました。さて早速ですが、TD-M1で仕上がりをあらためて聴かれていかがでしたか?

畠山:正確だっていうお話をマスタリング作業の時にセイゲンさんから伺ったんですが、正確な音が出るというのはミュージシャンにとってはホントにありがたい事ですよね。ライブの時などは2~3人お客さんの数が変わるだけで音が変わるというくらい、正確な音を聴く環境を作るというのは大変難しいことですよね。でもこのスピーカーで聴くと、ほんとストレスがないというか、ミュージシャンや自分が「こうやりたかった」とか「こういうふうにやるつもりだった」という部分がきちんと出てくるので、すごく報われた気持ちになります。「自分のやりたかった通りの音だ」とか、そのときの空気感とか楽器や口の輪郭まで分かるって感じですね。

オノ:最初に畠山さんの今回のアルバムをマスタリングするとき、(プロデューサーの沢田)穣治さんが持ちこまれた録音をまずは全体像を把握するためにパラパラとめくるように聴きました。エンジニアの中村さんの録音とミックスがよくできていて、ハイレゾ用のマスタリングでは、ほとんど録られたそのままです。なにもやることなかったです。とはいえCDでは少しレベルをあげるためにみなさんの意見をとりいれました。どこをとっても演奏者の意思というか、想いの強さが伝わってきましたね。そういえばあのマスタリング時にTD-M1で音を聴いたとき、涙流してましたよね。

畠山:じつは今も泣いちゃってるんです(笑)

沢田:彼女はこういう人なんですよ。これは決して自分の歌に酔って泣いているんではなくて、もっと深遠なところで心が通じているからなんです。

畠山:でも今聴いてて思ったのは、精神的な事とか演奏や自分の歌のニュアンスとかを「あっ、ちゃんとつかんでくれてる!」っていうとてもありがたい感じですね。

オノ:録音されている音が、そのままちゃんと再生されてる、ということですね。

沢田:そう、その精神的なものを感じる、というのは録音した時の状態を時間・空間をこえてタイムマシンとしてここで再現されているからなんだよね。

オノ:今回の録音って、実は歌はほとんど一発録りらしいですね。

畠山:最初からそのつもりではなくて、これだけの名曲集なのでじっくり歌おう、って思っていたんですが、、、

沢田:そうそう。彼女はそう言ってましたね。でもぼくの思惑は実は最初から一発録りのつもりでした。(笑)

オノ:一発目の演奏ってすごくピュアになりますよね。一回目の演奏後に自分の演奏をプレイバックしてしまうと、次のテイクからは、無意識のうちにも、次はこうしようという修正の意識が働くから、だんだんとピュアな方向から外れてしまう事が多いんです。畠山さんの歌が聴いててドキドキするっていうのは、実はそういうところからきてるなと。

畠山:あぁ、なるほど、、、何となく調整っていうか、「あんばい」がうまくいったのかなぁって思います。変な欲が出る前に調整すべきところがわかっててチューニング出来たって感じのセッションでしたね。

オノ:今回のアルバムはすでに色々なところで聴かれたと思うんですが、そういうドキドキ感っていうのが、TD-M1の音の感じは他のスピーカーと比べてどうでしたか?

畠山:言葉でうまく表現出来ないんですが、発音の微妙なニュアンスを本当にとらえてくれてるっていうのに驚きましたね。特に「日本語の持つ独特の美しさを表現したい」と思っていた部分までとらえてくれていて、かつ何の心残りの無いように「わびさび」まで表現してくれているなって思いましたね。

オノ:他のスピーカーでは、音づくりとして独特の色づけがあるけど、TD-M1は本当にそれがないです。

沢田:レコーディングした時の畠山さんの思いが時空を超えて、聴き手に忠実でダイレクトにタイムマシンとして伝えている感じですね。あとは聴き手が同じような感受性を持っていればそれで完璧ですよ。TD-M1はそういう橋渡し的な役割を担っているツールですね。

畠山:(私の曲は)これで聴いて欲しいですね!(笑)

オノ:2001年から色々とソロ活動をされてきてますが、今回は名曲のカバー集ですよね。自分としてはそれが驚きで音を聴いてさらに驚いたんですが、どういったきっかけで作ろうと思ったんですか?

畠山:演歌も歌謡曲もリアルタイムで子どものころから聴いている世代なんですね。だから好きなんでライブでもやってたし、昔からやってみたいって思っていたんです。特にライブでは、お客さんも喜ぶので距離感が縮まる感じもあり、自分自身も楽しいし。でも演歌って難しいじゃないですか。どういう風に作ればいいのかって。そんな時に、長く親交を頂いている沢田さんの「東京縛音舞」のライブを完全にインプロ(即興演奏)でやっておられるのを見て、「この人だったら原曲自身すら知らない魅力をきっと引き出してくれる」と感じ、沢田さんプロデュースで今回のアルバムを作れたらと思ったんです。

オノ:演歌ってホントに難しいですよね。でもそこをうまくやっているっていう感じが本当にうまく出ているアルバムですよね。今後はどういう事をやっていきたいですか?

畠山:勝手に第二、第三弾をやってみたいなぁと(笑)やりたい曲がいっぱいあるので、ライフワークにしたいくらいですね。変にマーケティング的に、という事ではなく歌集としてやって行きたいです。ミュージシャンの方たちも造詣が深い方ばかりなので、歌詞の解釈をみんなでディスカッションするのがとっても楽しいんです。いやぁ、、今回はとっても得がたい経験をさせて頂きました。

profile

畠山 美由紀 (シンガーソングライター)

宮城県気仙沼市出身のシンガー・ソングライター。カフェブームの先駆者・男女ユニット“Port of Notes”、ダンスホール楽団“Double Famous”のボーカリストとして活躍する中、2001年、ソロデビュー。

近年の主な活動は、2011年3月、東日本大震災で被害を受けた故郷を想い「わが美しき故郷よ」と題した詩を自身のブログ、雑誌で発表後、同年11月、同名アルバム「わが美しき故郷よ」を発表。被災した人たちだけでなく、故郷を持つ全国の人々の心に届き、多くのメディアで取り上げられ話題に。2012年10月1日(コーヒーの日)、ギタリスト小池龍平との企画アルバム「COFFEE & MUSIC」を発売し、全国70ヶ所の小さなカフェからFUJI ROCK FESTIVALまでライブを遂行。

2013年6月、NHK大河ドラマ「八重の桜」の音楽担当、近年のジェーン・バーキンのワールドツアーに音楽監督/ピアニストで活躍中の中島ノブユキをプロデューサーに迎え、“雨の日のためのアルバム”をコンセプトに、アルバム「rain falls」を発表。同年11月、日本製紙クリネックススタジアム宮城にて開催された「コナミ日本シリーズ2013」第6回戦(東北楽天ゴールデンイーグルス 対 読売ジャイアンツ)にて国歌斉唱を担当し、注目を浴びる。

2014年9月3日、美空ひばり、ちあきなおみ、研ナオコ、森昌子、布施明、藤圭子、八代亜紀…、往年の演歌、歌謡曲の名曲を歌う、カバーアルバム「歌で逢いましょう」を発売。現在は、FMヨコハマ「Travelin’ Light」(生放送/土11~13時)のDJとしても活動中。

その他詳しくは公式ホームページhttp://hatakeyamamiyuki.comをご覧ください。

最新アルバム情報

「歌で逢いましょう」
発売日:2014年9月3日(水)
品番:RBCP-2786 JAN:4545933127869
発売・販売/株式会社ランブリング・レコーズ
価格:¥3,000(税抜)

01. シクラメンのかほり(布施 明)
02. それぞれのテーブル(ちあきなおみ)

03. 時の流れに身をまかせ(テレサ・テン)

04. 花の夜舟(作詞/作曲:畠山 美由紀、AL「わが美しき故郷よ」収録曲 セルフカバー)
05. おんな港町(八代亜紀)
06. 圭子の夢は夜ひらく(藤 圭子) 選曲:森 雅樹/EGO-WRAPPIN’
07. 悲しい酒(美空ひばり)
08. 越冬つばめ(森 昌子)
09. かもめはかもめ(研 ナオコ)
10. 紅い花(ちあきなおみ)
11. 歌で逢いましょう(新曲!作詞/作曲:畠山 美由紀)
*(オリジナルアーティスト)
プロデューサー:沢田穣治

アレンジ:沢田穣治、笹子重治

録音&ミックス:中村督(POTETO STUDIO)

「歌で逢いましょう」特設サイト
http://rambling.ne.jp/utadeaimasho/index.html