エンジニア

JEFF JONES “THE JEDI MASTER”

ジェフ・ジョーンズ“ザ・ジェダイ・マスター”

ECLIPSEは未だかつて経験したことのない音

ドクター ジョン、ウィントン マルサリスなど数々の大物アーティストを手がけるグラミー賞受賞プロデューサーのジェフ ジョーンズ 「ザ ジェダイ マスター」。2013年にニューヨークで開催されたAES(Audio Engineering Society)のECLIPSEブースでTD712zMK2 / TD725SWMK2を試聴してECLIPSEのファンになってもらえました。それ以降TD-M1を制作で使うことで、自身のスキルが「新しいレベルに」向上したと語るほど。
今回はECLIPSEとの出会いからこれまで使ってこられた経緯について、ご自身に語っていただく事が出来ました。

信じられないほど正確でピュアに音が再現

私は70年代半ばから主にレコーディング・スタジオでエンジニアのキャリアを積み、4つのレコーディング・スタジオを立ち上げた。トーキング・ヘッズ、パブリック・エナミー、ウィリー・ネルソン、ドクター・ジョン、エリック・クラプトン、ウィントン・マルサリスなど、多彩なアーティスト達と仕事をし、スピーカーシステムもさまざまなものを扱ってきたが、ECLIPSEを試聴して味わった音は、未だかつて経験したことのないものだった。

ECLIPSE TD712zMK2とTD725SWMK2を初めて聴いたのは、2013年10月にニューヨークで開催されたAESだったが、第一印象はプロ向けモニターというよりはHi-Fiタイプのスピーカーだなというものだった。設計担当の(小脇)ヒロシと話をしたのだが、彼が出してきたテスト音源は、自分の耳に聴こえているものが信じられないほどすばらしいものだった。ところが、自分のミックス音源で少し試聴してみると、それほど良いとは思えなかった。かなり真剣に取り組んだと自負していた音源だったので、これには自分でも驚いた。

そこで、翌日ブースを再訪し、ヒロシにもう一度自分のミックス音源を聴かせてもらったのだが、色々聴いてみた結果、やっと、このスピーカーシステムで良く聴こえる一曲を見つけることができた。それは、私が自分のミックス音源のサンプルとしてクライアントに聴かせている、ベスト作品集の中の一曲で、私はそのとき、これはスピーカーが悪いのではなく、自分のミックスのせいだということに気が付いた。その日は、大型のスピーカーシステムと、それより小さいTD-M1の両方で聴いてみたが、どちらも結果は同じだった。

ヒロシの提案で、私のスタジオでTD-M1の試聴をすることになり、私が普段使っているスピーカーと比較してみたのだが、やはり、音が信じられないほど正確でピュアに再現されていて、いたく感動した。ヒロシはその日、TD-M1の機能や特徴を詳しく説明してくれたが、そのどれもが深く納得できた。

TD-M1を聴いたとき、私の望むミックスが実現できると直感

私は自分の音にかなりのこだわりを持っている。必ず種類の違うスピーカーシステムで自分の制作したミックス音源とマスター音源を試聴するし、ミックス音源は複数のヘッドホンでチェックしている。私が気付いたTD-M1と他のスピーカーとの違いはダイナミクスの鮮明さだ。ヒロシの説明では、フルレンジスピーカーを綿密に設計されたエンクロージャーに組み込むことで、クロスオーバーネットワークで発生するタイムアライメントのブレなどがなくなり、トランジェントがよりリアルに再現されるということだった。

TD-M1の設計の基本方針を聞いていると、彼が指摘する点の多くが、私のこれまでのスタジオ経験と結び付いていった。
私は必ずすべてフラットに録音するし、EQやコンプレッションは使わない。自分の求めている音はマイクとマイクの位置だけで得るのが流儀だ。そうすることで、楽器の自然なダイナミクスがきちんと録音されるからだ。だからミックスやマスタリングでダイナミクスが修正できるように余裕を持たせたい。TD-M1を聴いたとき、これを使えば私の望むミックスが実現できると直感した。

TD-M1を使い始めてからミックスやマスター音源を制作する際のダイナミックエフェクトの使い方を変えた。TD-M1で聴いたことで自分のミックスのやり方を変えるようになり、自然なダイナミクスにそれまでよりずっと敏感になった。TD-M1のおかげでビジョンがずっとクリアになった気がする。まるで、長年「度の合わないめがね」をかけて過ごした後、「きちんと度の合っためがね」にかけ替えた様な気分だ。
すべての、私の完成作の本当にすべての点が、格段に洗練された。音楽のダイナミクスとトランジェントに対する私の感受性は数段レベルアップした。

TD-M1を使ったレコーディングはすべて音質が向上

私のスタジオ内のシグナルフローは、とても複雑で入り組んでいるが、私はシグナル経路の中の複数のポイントで聴くのが好きだ。そうすることで、一般的なデジタルコンバーターによってどのように音が劣化するのか確認できるし、比較できる。多重音源から出るTD-M1のデジタル入力を使ってモニタリングする方法を掴むのは最初は難しかったが、試行錯誤の結果、TD-M1の機能をより深く理解できるようになった。

色々と試してみて、TD-M1が最も能力を発揮するのは、TD-M1に搭載されたデジタル/アナログコンバーターを使ってUSBに接続したときだということがわかった。このコンバーターにはオーバーサンプリング機能はない。最初、私はこのスピーカーにはXLR入力がないと思っていた。XLR入力はプロフェッショナルのレコーディングでは普通のことだが、旧態依然であるのも事実だ。TD-M1は独自のWi-Fiネットワークを構築してワイヤレスでの再生が可能だ。そんなことができるスタンドアローン型のスピーカーがあるとはそれまで知らなかった。
私の出した結論は、TD-M1の接続性は極めて最先端の技術が可能にした、ということだ。これはTeslaの自動車のコンセプトとか、Apple社のコンピューターやiPhoneを制作する前に正確にイメージしていたスティーブ・ジョブスに匹敵するだろう。未来に目を向けて考えなければならないということだ。未来に目を向けて考えることは、私たちの社会が、生活、交通、エネルギー消費、健康的な食物、バランスの取れたライフスタイルといったもののすべての面を動かしていくベースになっている。

ヒロシはTD-M1でそれを実現したのだ。システムのシンプルで簡単な操作性はよく考えられており、パワフルで正確なものとなっている。
TD-M1を使えば、どんなスタイルの音楽でもすべての角度からリアリスティックな視点で眺めることができるので、TD-M1は私にとって信頼の置けるリトマス紙のような存在になっている。
TD-M1を聴き、TD-M1を使って仕事をするようになってから、私のスキルが新しいステージに昇格したことは明らかだ。ビジョンがクリアになったので、TD-M1を使ってプロデュースしたレコーディングはすべて音質が向上している。

私はアーティストだ。そして、私がプロデュースするレコーディングはハイレベルの芸術だ。TD-M1という、より精密なツールで作業ができるようになった成果は、私の作品にはっきりと表れている。

profile

ジェフ・ジョーンズ“ザ・ジェダイ・マスター” (エンジニア)

2009年グラミー賞受賞のプロデューサーであり、ナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス(The National Academy of Recording Arts & Sciences)の投票権を持つ委員。シリウスXMサテライトラジオ(Sirius XM Satellite Radio)のレギュラー番組「リアルジャズ」のプロデューサーでもある。
ジェフは現在、ジャズ・アット・リンカーンセンター(Jazz at Lincoln Center)と契約を結び、ウィントン・マルサリスのディレクションのもと、アルバムおよび特別プロジェクトの制作、レコーディング、ミキシングを行っている。 また、マンハッタンにある、ジェフが代表を務めるワールド・アラート・ミュージック(World Alert Music)でも制作およびレコーディングを行っている。

ジェフ・ジョーンズ“ザ・ジェダイ・マスター”に関するさらに詳しい情報はこちら
http://www.jedinyc.com/