TD725swの実力の高さを実感した「HD DVD アポロ13」/小原 由夫のサイト・アンド・サウンドVol.19

ECLIPSE Home Audio SystemsのサブウーファーTD725swの売行きが好調のようだ。世界最速を目指し(別にタイヤが付いていて世界一速く走るわけではないのだけれども)、2基の25cmウーファーを背中合わせに取り付け、双方をアルミシャフトで結合するというその構造の卓抜さもさることながら、リスニングポイントからボリュウムや再生モードが変更可能なリモコン対応など、使い勝手も十分に練られている。そしてなにより凄いのは、エンクロージャーの振動がほぼゼロで、不要共振なしでレスポンスの鋭い低音が繰り出されてくる、心地よさ、気持ちよさだ。階下や隣家など、周囲に気兼ねしながら音量を押さえていたオーディオファン、AVファイルにとって、TD725swの登場は、まさしく「待ってました!」と膝を叩きたくなるものに違いない。私も近く完成予定の新居のAVルームに、この世界最速サブウーファーを導入したいと思っている。

ところで今回は、このサブウーファーの真価、ポテンシャルが存分に堪能できるソフトを紹介したい。とはいっても、現在話題集中の次世代DVDプレーヤー、東芝HD-XA1のユーザーに限られた話になってしまうのが申し訳ないのだが、米国盤HD DVDソフト「アポロ13」の低音がとにもかくにも凄いのである(若干劣りはするものの、国内盤の現行DVDでも、それに準じた迫力の音声が楽しめることを先日確認したのでご安心を)。ちなみに主演はトム・ハンクス、監督は現在「ダヴィンチ・コード」で注目を集めているロン・ハワード。1995年作品だ。

往時にリアルタイムでアポロ13号の打ち上げ映像をご覧になった方が、本コーナーを観ていただいている中でどれだけいるかはわからないが、本盤のチャプター4は、決して大袈裟ではなく、その世紀の瞬間をあたかも近くで観ているようなリアリティーを感じる。フルHDならではの鮮明かつ精密なその映像も素晴らしいのだが、打ち上げ時に噴射される炎の爆音と、重たい物体が推進していく重量感を伴った轟音など、これまでにLD(レーザーディスク)やDVDで何度も観てきたこのシーンの音に、実に様々な音がオーバーラップしていることが、TD725swを据えたECLIPSE Home Audio Systemsの5.1chシステムで聴いて初めてわかったのである。

まず驚かされたのは、月並みだけれどもいろんな種類の効果音がこの打ち上げシーンには重ねられていること。計器類が発する金属音や、船体の軋みや鉄塔が外れる際に生じたであろう歪み音など、これまで気付かなかった微かな響きやニュアンスが記録されていることがわかった。そこに重厚な音楽が重ねてミックスされることで、シーンの緊張感や感激度が強化されているのがわかるのだ。

本盤には、従来のドルビーデジタルよりも情報量を大幅にアップさせた「ドルビーデジタル・プラス」という音声規格が採用されている。その音を楽しむためには、現時点ではまだAVセンターにそのデコード機能がないために、アナログ5.1ch音声接続になってしまうのだが、それでもデータ量増大の恩恵ははっきり認識できる。

その効能が顕著に現われたのが、重低音の質と量。轟音の中に交じった細かな金属音やエネルギー感の緩急。単に迫力があるだけでなく、点火時とパワーアップ時、推進力が上がって打ち上げ台から離陸した時の強大なエネルギーの差が、ここまできちんと作り込まれていたということに、改めてハリウッドの映画制作の奥深さを実感した次第である。

それにしてもTD725swは、重量感たっぷりのその轟音をまったく怯むことなく、なおかつクリップもせずに、クリアーかつ力強く再現した。前記した量感や質感、エネルギーの差も明瞭に描き分けた。特に感心したのは、離陸直前の轟音にひときわブーストがかかる様子。重々しい低音が全方位にスムーズに拡散していったのだ。

いやはや、凄いサブウーファーが出てきたものだ。