ピンクフロイドで感じたTD725swの魅力/小原 由夫のサイト・アンド・サウンドVol.20

TD725swは、ECLIPSE Home Audio Systemsの多彩な機能を持ったサブウーファーだ。ボリュウムや位相などが試聴位置でリモコンにて調整可能だが、もうひとつ、ぜひ積極的に使い分けたい機能がある。それが「モード」の切替えだ。ダイレクトとベースの2つが備わっており、前者はフラットな特性、後者は特定の帯域を少し持ち上げた特性になっている。基本的な使い分けは、映画ソフトではベース、音楽ソフトではダイレクトを選択すればいいと思う。

9月下旬に国内盤がリリース予定のピンクフロイドのDVD2枚組ライヴ盤「驚異/P・U・L・S・E」は、このサブウーファーの調整には格好の1枚だ。95年ワールドツアー時の、ロンドン/アールズコートでのライブを収録した本作は、かつてビデオやCD等で発売されていたが、今回の再発に当たって新たにデジタルリマスターされた映像と、5.1ch化されたドルビーデジタル信号が収録されている。

蘇ったこの10年前の伝説のライヴでは、「狂気」の全曲連続演奏や、派手な電飾やスクリーン投写などの仕掛けを使ったアトラクション的演出とが当時話題になったが、今回の5.1ch化によってサウンドが一層強化されており、興奮度が俄然高まっている。

ここでは、DISK1のラストに収録されている「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(PART2)」から「ワン・オブ・ディーズ・デイズ(邦題/吹けよ風、呼べよ嵐)」へと続く、凄まじい重低音を取り上げるとしよう。

「アナザー・ブリック・イン・ザ・ウォール(PART2)」は、ヘリコプターの旋回音が始まる。ECLIPSE Home Audio Systemsはこういった音のパンニングを実に的確に再現する。お馴染みのギターカッティングのイントロが流れると、観客の拍手や歓声が俄然ヒートアップ。そしてコーラスと共にダイナミックなドラムが叩かれる。ここでズシリとした重々しいビートをTD725swは繰り出してくる。そのクリアーな質感と、メインスピーカーと一体となったシームレスなつながりは、余計な響きや付帯音が発生しにくいエンクロージャーに負うところが大きい。ここまできっちりとビートの音階が聴こえるサブウーファーは稀だろう。

ステージは真っ暗になり、お馴染みの怪しいベースラインが始まると、舞台装置は七色の光線を放って辺り一面を照らし出す。花火が放たれ、ステージ上部の両サイドからブタのバルーンが登場する。「ワン・オブ・ディーズ・デイズ」の始まりだ。あの切れ味鋭いギルモアのトーンが響くと、観客はまるで金縛りでもあったようにじっと音の洪水に酔い痴れている。やがてエンディングで我に却ってスタンディングオベーションという状態なのだ。

この時のビートは非常に鋭く、しかも速い。それを難なくスピード感たっぷりに再現するTD725swは、エンクロージャーの造りや2基のユニットの連結構造だけでなく、ユニットの素性のよさや、内蔵パワーアンプ(デジタル方式)とのコンビネーションのよさもセールスポイントになると思う。

ここでモードをダイレクトからベースに切り変えてみた。バスドラムの響きに力強さが出てきたが、決して量感過剰になることはない。ボーボー、ズンズン鳴らない、真に静かなサブウーファーであると、最近改めて実感していたが、このピンクフロイドのライヴ盤を観てそうした感覚を一層強めた。