何故サラウンドは広くあまねく普及しないのか?その2  /小原 由夫のサイト・アンド・サウンド(Ver.2:第13回)

前回は、サラウンド普及の障壁となる事象を数項目記した。その中で、現状ではいかんともしがたい点があることも事実である。

例えば、配線の問題。これは現時点では致し方ないところで、各メーカーはワイヤレス(無線)伝送も含めて研究や開発を重ねているが、日本は電波法の取締りや基準条件が大変厳しく、本格的な実用化までにはもう少し時間がかかると思われる。

モアチャンネルの動きも、技術革新や研究というレベルでは、止まっていては進歩がないわけで、実用化とは別に、可能性の探求という面から肯定的に捉えることができる(実用化のタイミングには、慎重を期してほしいが)。

では、それ以外の項目はどうか。それらの条件をクリアーする手段として、以下のような要件が考えられる。

【1】スピーカー自体が小さいこと
横置きのセンタースピーカー専用モデルを使わなくても、スピーカー本体が小型であれば、フロント3チャンネルを容易に統一することができる。このケースでは、大型スピーカーを使ったメインシステムを崩すことなく、あるいは取ってつけたような小型スピーカーをリア用に用意してアンバランスなサラウンドシステムを組まなくても、5本の整合性が取れたサラウンドシステムが組めるという点に注目したい。サイズが小型であるため、低域の周波数やその音量の再生限界は考慮しなければならないが、良質のサブウーファーを用意し、設置場所やクロスオーバー周波数を綿密に調整していくことで、その限界を補うことは十分に可能である。

【2】設置性が柔軟なこと
【1】とも関連してくるが、設置のしやすさは、メインシステムに影響を与えることなくサラウンドを組める可能性が高い。小型であれば、スペースセービングという点からも好ましい。また、角度調節機構が備わっていれば、壁や天井に取り付けた場合でも、望む方向にスピーカーの放射特性を向けることができる。

【3】音色的/視覚的に統一されていること
同一シリーズがラインナップされていても、センター専用モデルや小型スピーカーは、微妙に音色が異なることが多い。仕上げの統一感ではなく、音色の統一という点では、5本のスピーカーに同一モデルを使うことが最も望ましい。当然、見た目にもバッチリ揃う。

以上の点に合致するスピーカーを考えた時、イクリプスTDシリーズスピーカー(特にTD307IIやTD508II、TD510)は、サラウンドシステムにとても適しているといってよい。小型であるし、角度調節機構も組み込まれている。もしも予算的に5本同じタイプにするのが難しいという場合でも、卵型でエンクロージャーが統一されているので、例えばフロント3chにTD510、リアにTD307IIという組合せであっても、視覚的なマッチングはいい。音色が揃っていることはもちろんいうまでもない。

小型スピーカーのメリットは、エンクロージャーサイズが大きくないので、箱鳴きやバッフル板の反射といった空間再現性を阻害する音響的要因が少ないことが挙げられる。エンクロージャーが振動しにくい卵型を採用したイクリプスTDシリーズスピーカーは、そうした点でまさに理想的。それゆえ、サラウンドならではの立体感や遠近感、方向感や包囲感がとてもリアルに再現されるのである。

繰り返しになるが、長年手塩にかけた大型のメインスピーカーによるオーディオシステムを崩さなくても、イクリプスTDシリーズスピーカーで5本揃えたサラウンドシステムならば、サラウンドの魅力や醍醐味が存分に堪能できるのである。