考察:なぜプロの演奏家がECLIPSE Home Audio Systemsを選ぶのか  /小原 由夫のサイト・アンド・サウンド(Ver.2:第21回)

音楽信号の正確な再現を目指したECLIPSE Home Audio Systemsは、感度の高いオーディオファイルや音楽ファンに支持され、ほぼ10年になろうとしている。この間、一般ユーザーばかりでなく、多くの音楽家やアーティストが、このスピーカーの音に共感し、使用されていることは、本ページの読者ならば既にご存じのことだろう。今回は、そうしたプロの耳がECLIPSE Home Audio Systemsを選択する理由を、私なりに考察してみたいと思う。

ECLIPSE TDのWebサイトには、国内外の音楽家や音楽製作に携わる「ECLIPSE TD Used By」が掲載されている。その音楽家の欄をザッと眺めると、弦楽器奏者が多いことに気付くことだろう。

打楽器や管楽器などに比べると、ほとんどの弦楽器は音量が小さい。特にヴァイオリンやクラシックギター等、電気的な増幅手段に頼らない(アンプを通さない)アコースティックな弦楽器では、ホールに響き渡らせるような大きな音を出すのは難しい。

しかし、弦楽器奏者は、その音を近くで直接聴いている。弦の震えや繊細なトレモロなど、自身で奏でた微細なニュアンスをダイレクトに聴いているわけだが、そうした微細な響きの違いをしっかりと明瞭に再現してくれることをスピーカーには求めるはずだ(彼らの中でコンサートホール等のステージでPA用にECLIPSE Home Audio Systemsを使う方もいる)。

つまり、彼らがこのスピーカーを選択したということは、このスピーカーにそうした微細な情報を忠実に再現し得る能力があるということなのだろう。

弦楽器奏者に限らず、多くの音楽家は、普段私たちが音楽に接している時間よりもずっと多くの時間を「音」と接している。「音」としたのは、私たちが聴いている「音楽」という最終形態ではなく、音楽として成立する前の「音」もたくさん含まれるのではという推測からだ。その中には、単純な単音もあれば、歪みやノイズといった不快な音も含まれることだろう。まさに“生音”である。

音楽家は、そうした生音に含まれるいわば必要な音と不必要な音に日常から曝され、それをダイレクトに(時には私たちが体験するよりも遥かに大きい音で)聴いているわけで、それを峻別する能力をおそらくはTDスピーカーに見出だしたのではなかろうか。

音色が素直だからとか、色付けがないからという単純な理由で彼らがECLIPSE Home Audio Systemsを選んでいるとは、私には思えない。演奏に込めた自分の思いやパッションを再現してくれること、そして時には自分の身体的なコンディションや精神的な心情までをもあからさまに出してしまうこのスピーカーの性能に、他のスピーカーとの大きな違いを見出だしたのではなかろうか。そうした再生音における信頼感こそが、演奏家がECLIPSE Home Audio Systemsを選ぶ理由に他ならないのだ。

普段接しているオーディオ機器に私たちが求めるものは、心地よく音楽が聴けるものという要素が大きいかもしれない。しかし、製作者サイドは、心地よさだけでは仕事にならない。そうした面では、いい響きはもちろん、悪い響きもオブラートに包むことなくストレートに再生するECLIPSE Home Audio Systemsは、いわば自分の音楽性を表現する上で重要な道具になっているのである。