サブウーファーの置き方と置く位置
小原由夫のサイト・アンド・サウンド(Ver.2:第32回)

ECLIPSE Home Audio Systemsを使い、ある程度音量を上げて音楽や映画ソフトを再生すると、サブウーファーが欲しくなることがある。「TD712zMK2」ならばまだしも、5・3シリーズを用いたサラウンドシステムでは、アクション映画等の重低音を十分に再生するには必須と思っている。

低音は波長が長いので、左右の耳に到達する時間に差が生じにくく、聴感上は方向感がないといわれる。したがって、低音を再生するサブウーファー(スーパーウーファーを含む)は、部屋のどこに置いてもよい、といった記述や解説を製品カタログや雑誌記事等で目にしたことがあると思う。

実は、ここに大きな落し穴がある。

波長とは、空間を伝わる波動の山と山、谷から谷までの一定周期の長さを言う。オーディオの場合、波動は正弦波(サイン・ウェーブ)のことをさす。周波数が高くなればなるほど、波長はどんどん短くなっていく。周波数が低ければ、波長は長いのだ。

例えば50Hzの波長は、実に6.8mに達する(波長=伝搬速度÷周波数、空気中の伝搬速度は1秒間で340m)。つまり、最も強い振幅の大きさを感じるには、サブウーファーから6.8mも距離をとる必要がある。

これでは非現実的だ。6帖間では到底無理。その倍の12帖の部屋でも、長手方向の一方の壁際にサブウーファーを置き、反対側の壁にへばりついたとしても、とても最良の状態で聴くことはできない。2倍の100Hzでは、波長は3.4mになり、ようやく8帖間の1辺とほぼ同じになる。しかし、100Hzはあえてサブウー ファーで再生しなければならないような低音ではない。

つまり、サブウーファーの置き場所をまともに理論通りに考えたら、とても一般住宅では無理ということなのである。それゆえ、どこに置いてもいいといういわば妥協案が罷り通っているに等しい(もっとも、都合のいいところへどーぞという商売的ニュアンスも無視できないが……)。

しかし、高性能なサブウーファーを使っていると、やはり重低音が再生されているのがどこからなのか、音源位置が明確に感じ取れてしまう。狭い部屋では余計にそうだ。

では、どこにサブウーファーを置くのがベストか。2ch(ステレオ)でも、サラウンドでも、メインスピーカー近傍に置くのがセオリーとされている。狭い部屋でステレオ再生主体のシステムでは、明確な方向感を感じてしまうので、左右のスピーカーの中央にサブウーファーを置くか、または左右のスピーカー各々にサブウーファーを1台ずつ当てるのがベターだ。

ITU-R(電気通信に関する国際的な標準規格を策定する組織)の勧告では、リスナーから見た同心円上に5本のサラウンドスピーカーを配しているが、サブウーファーもそれと同じ円周上に置くのが望ましいというのが暗黙の了解だ(ITUでサブウーファーの位置は特定していない)。その配置図上の共通の認識は、センタースピーカーと左用スピーカーの間、あるいはセンタースピーカーと右用スピーカーの間にサブウーファーを置くということである。やはり、メインチャンネル用スピーカーの傍ということになる。

昨今のAVアンプには、付属マイクでスピーカーの距離を自動測定し、オートマチックで最適なレベル合わせをしてくれる機種が多い。この機能を使って距離を合わせ込んでもいいが、サブウーファーの方式/構造によっては、物理的な距離よりもずっと長い距離で判定されるケースが見受けられる。この原因は、サブウーファーが扱う低音の波長の問題や、スピーカーユニットの駆動方式などが考えられるが、あまり気にする必要はない。

サブウーファーのスピーカーユニットをリスナー正面に向けるのではなく、視聴位置から見てやや斜めにしたりすると、方向感が微妙に変わるので試してほしい。また、エンクロージャーの下に木製やゴム製、金属性のインシュレーターなどを使うことで、低音の量感や歯切れよさが変わるので、いろいろとトライしてみたい。

よほどしっかりした頑丈な壁ならば別だが、サブウーファーを壁にぴったり寄せたり、部屋の隅に設置することは避けたい。壁が振動してしまって低音楽器の音階が曖昧になったり、ドローンとした鈍重な低音になりやすいからだ。部屋全体が響いてしまうと、集合住宅などに住んでいるケースでは、近所迷惑にもなりかねない。低音はいわゆる骨伝導で振動が伝わりやすいのだ。「TD725sw」 は、特殊なエンクロージャー形式によって、キャビネットに振動が伝わりにくい設計なので、集合住宅にお住まいの方にお薦めしたい。インシュレーター等も特に用意しなくてもいいエンクロージャー構造になっている。

メインスピーカーやサラウンドの5本が小型スピーカーであっても、大型スピーカー顔負けのパフォーマンスに出会うことがある。
そこには必ずサブウーファーの巧みな操作術があるのだ。