サブウーファー考現学 その1/小原 由夫のサイト・アンド・サウンド(Ver.2:第4回)

楽器にはそれぞれ出せる音の基本周波数範囲がある。細かく分類すると、同じ形式であっても周波数範囲が異なる楽器さえある。また、倍音成分まで含めれば、再現可能な周波数範囲はさらに広くなる。今回は、高い周波数はバッサリ切り捨てて、低い周波数に話を限定する。

一般的な楽器の中で最も広い範囲の周波数が再現できる楽器は、ピアノといわれている。だいたい40Hzから6kHz付近までが基本周波数範囲だ。パイプオルガンになると、10数Hzから10kHz付近までと非常に広い。ハープも低い方は40Hzぐらいから出せるようだ。ベースやバリトンサックスは、実はさほど低くなく、50Hzとか80Hz近辺からそれ以上の周波数になる。

ここでは便宜上、100Hz以下の周波数を低周波としよう。大型スピーカーを除き、世の中の多くのスピーカーは、100Hz以下の信号 を十分な音圧(音量)で連続して再生するのは意外にしんどい。周波数特性に関しても、中音域のように特性が平坦でなく、ダラダラと下降気味だ。イクリプスTDシリーズスピーカーとて例外ではなく、ドライバーユニットの口径の小ささや、前後に動くことのできるピストニックモーションの可変幅などの制限が伴う。低周波が十分に再生できない場合は、音がクリップして(歪んで)しまったり、極端に小さな音量になってしまったりする。

では、低周波の信号を十分な音圧できっちり再生するには、どうすればいいか。30cmとか38cmの大口径ウーファーを搭載した大型スピーカーに買い替えるというのも手だ。だが、金額がバカにならないし、大きなスピーカーに入れ替える設置スペースのことも考えなければならない。

そうした点では、より有用な策が、サブウーファーの導入である。占有スペースの問題はあるが、置き場所にはさほど制約がない。部屋の隅などのデッドスペースで構わないのだ。また、メインスピーカーを買い替えるのに比べれば、金額面も抑えることができる。

では、改めてサブウーファーを使う意味を考えてみよう。前述したように、楽器から出る100Hz以下の音の十分な再生を目指しての使用がある。サブウーファーを加えることで、現用システムを活かしたままで低周波の再生のみを追加(強化)できるわけだ。低周波がしっかりと再生されると、不思議と中音域だけでなく、高周波の信号まで明瞭に聴こえるようになる。

ところが、近年は音楽だけでなく、映画の再生においてもサブウーファーが重要視されている。それは、5.1chサラウンドに重低音専用のチャンネル「LFE(ロー・フレケンシー・エフェクト)」が備わっているからだ。

AVアンプを使ってサラウンド音声を楽しむ場合、サブウーファーを使わないケースでは、LFEをメインスピーカーに足し込む設定もできるようになっているが、100Hz以下をまともに再生できないようなスピーカーでLFEを再生しても、決してうまくいかない。アクション系やSFなどの最新映画では、LFEを積極的に活用した作品が多く、サブウーファーを使ってこそ、作品の醍醐味が実感できるというケースが多々ある。すなわち、現代ホームシアターはサブウーファーが必須というわけだ。

では、どんなサブウーファーを使えば、音楽も映画も低周波をしっかり再現することができるのだろうか。そうした性能において、イクリプスのサブウーファーはたいへん優れたところがある、というお話を次回に…。