ECLIPSE Home Audio Systemsの中核モデル、TD510、TD508IIがフルモデルチェンジをした。既にお聴きになった方も多いことだろう。TD510は、フロアースタンド付きのTD510ZMK2と、ベースタイプのTD510MK2、TD508IIは遂に第3世代機TD508MK3へと進化した。

エンクロージャーの容積はいずれもアップしている。TD508MK3で37%、TD510MK2で14%だ。こうした改善は、低音の量感アップ、あるいはエネルギーバランスの安定感という点に寄与している。グランドアンカー、仮想フローティング構造をつくるディフュージョンステーなど、2001年デビューの初代機からのメソッドも引き続き採用されている。スピーカーユニットは、振動板にカーボンファイバー、エッジにブチルラバーなど、使い慣れたマテリアルを用いているが、細部の仕様/形状は見直されている。

スピーカーユニットの改善はそれだけではない。ロングボイスコイル化によるリニアリティーの向上、ショートリング追加による磁気歪みの低減と高域のレンジ拡大、振動系周辺の空気の流れをスムーズにするための空気穴の追加(ボビン、またはダンパー)などで、従来から定評のあったインパルス応答に磨きをかけると共に、出力音圧特性と再生周波数レンジの向上を図っている。

TD512ZMK2は、上位モデルTD712zMK2の多くの特徴やフィーチャーを極めてスマートかつ合理的に採り入れた。1本足の一体型フロアースタンドは、やや前かがみという感じに傾斜したデザインが素敵で、角度調節の容易な無段階調節機構を採用している。

TD510ZMK2の音は、あわよくばTD712zMK2を脅かすかもしれない。さすがに低音域のエネルギー感や力感ではおよばないが、トランジェント感のよさはTD712zMK2以上かもしれない。つまり、インパルス応答が改善されていることを伺わせるのだ。

こうして見ると、TD712zMK2のよさは十分にわかるが、価格的に手が出ないと諦めていた人にとって、このTD510ZMK2は大いに魅力的に映ることだろう。

TD510ZMK2以上に大きく進化したのが、TD508MK3だ。エンクロージャー容積のアップだ けでなく、グランドアンカーの質量が何83%増である。低域が一段と伸びやかになった のは、容積の増加だけではなく、このグランドアンカーの質量増による制振性の向上が大きいと思う。

ドライバーユニット自体も前モデルTD508IIはパルプに対しTD508MK3はTD510MK2同等のグラスファイバーを採用している。そうした要点が、一段と広いレンジ感と腰の座ったエネルギーバランスのよさにつながっている。また、小口径ゆえ、高域のレスポンスが一層スムーズになっている。

どうやら新しいTD510ZMK2やTD508MK3は、ECLIPSE TDシリーズスピーカーがこれまで急所と指摘されてきた部分をことごとくクリアーしたようである。それでいて、従来からの良さはしっかりと伝承されており、空間感の再現力や音像定位の実在感が見事。まだ聴いていないという方は、ぜひ店頭でその音を体験していただきたい。