米西海岸を中心に活躍するジャズ/フュージョン系ドラマー、ハービー・メイソンがイクリプスTDシリーズスピーカーのエンドースメントに新たに仲間入りした。個人的に好きなドラマーということもあるので、今回はハービーに関する私感を記してみたい。

私がハービーの名前を知るようになったのは、ちょうどオーディオに凝り始めた頃とぴったり重なる。1970年代後半、音のいいレコードとして「ダイレクト・カッティング・ディスク」というのが話題になっていた。当時JVC/ビクター音楽産業(現ビクター・エンタテインメント)が積極的にこの方式を推進し、人気ギタリスト/リー・リトナーが相次いで同方式のレコードをリリースしていたのだが、リトナーのバンド「ジェントル・ソウツ」でドラムを叩いていたのがハービーだった。

「やけにタイトで俊敏だけれども、とてもパワフルな音だなぁ」というのが、私のハービーのプレイに対する第一印象。当時ハービーと共に人気を二分していた、米東海岸が拠点のスティーブ・ガッドの「手数が多くてエネルギッシュ」という激情型のホットな音とは異なり、ウェストコースト拠点らしい爽やかで抜けのよい音がハービーの特色だった(50年代からウェストコーストのジャズは、軽快さやクリアーさが一種の売りでもあった)。

私の記憶では、80年代始めの頃に貪り読んでいた音楽雑誌「ADLIB(アドリブ)」において、予備知識なしで日本のミュージシャンの演奏を聴かせて感想を述べてもらう人気企画「ブラインドフォールドテスト」というのがあり、その記事でハービーは、日本のフュージョンバンド/カシオペアの初期のアルバムを絶賛。それが縁で、カシオペアの全米デビューアルバム「アイズ・オブ・ザ・マインド」をハービーがプロデュースしたことがつい昨日の事のように思い出される。その後カシオペアはグローバルな人気を得た。

近年のハービーの活躍は、キーボーディスト/ボブ・ジェームスのアルバム参加をきっかけとして、91年に結成されたバンド「フォープレイ」で知られるところ。ここでかつての盟友リトナーとも組むこととなる(リトナーは97年に脱退)。また、04年/06年と立て続けにアコースティックなピアノトリオのアルバムを2枚発表し、4ビートでのハービーのプレイが聴けると話題になった。

一方で、Jポップ・シーンでもハービーを乞うアーティストは多い。ドリカムの吉田美和は、かつてソロレコーディングやツアーでハービーを重用している。

最近はいささか貫禄のある体格になったハービーだが、私が彼を聴き始めた70年代末はむしろ細身で、身体的なバネを活かしたようなスティックさばきによるクイックなビートとグルーブ感が魅力だった。さらに凄いのが、タイム感覚だ。それは単に正確さということではない。アンサンブルの中でまさしく絶妙なタイミングでリズム/ビートを繰り出してくるのである。彼のリーダーアルバムや参加アルバムを聴けば、リズムセクションのまとまりの磐石さ、安定感がしっかりと伝わってくる。

そうしたプレイスタイルは今も大きく変わっていない。そのタイム感覚は、おそらく天性のもので、まさに時間領域での感覚といっていいと思う。その辺りのセンスが、イクリプスTDシリーズスピーカーに関心を示し、コンセプトを理解した所以になっているのではないかと勝手に想像している(あながち外れてはいないと思うのだが…)。

それにしても、ハービーがイクリプスTDシリーズスピーカーを使っていると想像すると、かつてフュージョン小僧であった私は、なんだか嬉しくてワクワクしてくるのである。