CDが売れないと言われて久しいが、その一方で、静かに息を吹き返しつつあるのが、スーパーオーディオCD(SACD)だ。一時は自然消滅するかと思われた同規格だが、ここ数年、日本の某オーディオメーカーが大手レコード会社からライセンスを取得して独自にソフト販売を先導し、さらにEUのマイナーレーベル(ほとんどがクラシックの交響楽団が立ち上げた自主レーベル)も積極的にSACDでの新作リリースを始めているのである。

1999年に規格化されたこの方式の12cmディスクは、2000年代半ばにサラウンド音源収録を実用化しているが、前記EUのマイナーレーベルのほとんどが、5.0(5.1)chサラウンド音声を収録しているのが興味深い。

ECLIPSE Home Audio Systemsがサラウンド再生とすこぶる相性がいいことは、本コーナーでも再三述べてきたが、今回はSACDのマルチch再生をECLIPSE Home Audio Systemsで実践する醍醐味について改めて述べてみたい。

クラシックのマルチch録音は、基本的にフロントL/Rとセンターの3チャンネルでメインとなる音場イメージを構築し、リアL/Rはホールやスタジオのアンビエンス(残響、反射)に振り分けることがほとんど。いわば2chステレオで再現される音場イメージを360度横方向にエキスパンド(拡張)したような感じだが、当然ながら縦方向にも音の広がりが醸し出され、ホールの響きの強弱や天井の高さを感じさせる豊かな臨場感が生まれる。

この縦方向、すなわち高さの再現力が、ECLIPSE Home Audio Systemsは図抜けているのだ。なぜその再現力に優れているのだろうか。

ひとつには、球形(卵型)エンクロージャーにフルレンジスピーカー1基のみという構成がもたらすメリットが考えられる。汎用的なスピーカーの“前面バッフル”に当たる平面がなく、角もないので回折現象も起きにくい。併せて、エンクロージャー内部に定在波も生じないので、ユニットからの音波がつかえなくスムーズに前方空間に放射されるものと思われる。

ステレオ再生では、2本のスピーカーから の音波の合成によって音像/音場が構築される。空気中に放射されたその音波に余計な響きが付加されていたり、マルチウェイスピーカーユニット間のレベル/位相が狂っていると、音像や音場は歪められたものになり、忠実な再生とは程遠いものになってしまう。

マルチチャンネル再生では、そうした音波の合成が隣り合ったスピーカー間でつくられる。それが環状につながったものがマルチチャンネルのサラウンドサウンドになるわけだ。つまり、マルチチャンネルは、2chステレオの延長と捉えることができ、隣り合った2本のスピーカーに違う機種を使うということは考えられない。そうなると、5本すべてが同一スピーカーが理想なことは、自明の理である。

もうひとつのメリットは、小口径ユニットならではの、エンクロージャーがコンパクトということ。大きなエンクロージャーでは、箱自体の共振を抑えるのが難しい。コンパクトなサイズ、しかも綿密に設計されていれば、大きなスピーカーよりも共振しにくくつくることができる。また、小さければ、狭いスペースでも外的な影響が少ない状況でマルチチャンネルシステムを組むことができる。ECLIPSE Home Audio Systemsにおけるこの小ささというメリットは図りしれない。

余計な響きがなく、レベル/位相も正確なECLIPSE Home Audio Systemsは、2chステレオ再生において優れた音場再現力を有している。マルチチャンネル再生においても、メロディーやリズムが積み重なるような場面で、その階層的な音の重なりを巧みに再現できるのは、ECLIPSEが目指す「正確な音の再生」というコンセプトの具体化であり、コンパクトなサイズが、5本同一スピーカーというセッティングを容易にしている。

大きなスピーカーをお持ちの方、あるいは部屋が狭くてマルチチャンネル再生に躊躇している方。ECLIPSE Home Audio Systemsで、冒頭記したEUのマイナーレーベルのSACDサラウンドサウンドをぜひ体験してほしい。