デスクトップオーディオやPCオーディオ、あるいはコンパクトなサラウンドシステムへのニーズとして、イクリプスのTD307MK2Aぴったりの存在だ。前モデル「TD307II」と外観上は大きな差がなく(ECLIPSEのロゴ位置がネットからスタンドに変更された程度)、仕様/スペックも同一なのだが、音には一段と磨きがかけられている。

昨年モデルチェンジした上位モデルTD510MK2TD508MK3は、エンクロージャーの容積アップやグランドアンカーの重量増、さらにはユニットの使用材料の変更など、目で見える部分で具体的な相違点があり、スペックも大幅に向上した。その手法が今回のTD307MK2Aにも適用されるのが自然な流れと思うのだが、今回はモデルチェンジではなく、あくまで継続生産との事なので、次回に期待というところか。

エンクロージャーは見た目にまったく変わらないが、フルレンジユニットをよく見ると、センターキャップの接着部が若干違うようだ。しかし、それも微妙な差であり、横並びで比べてみないとわからない。

実はTD307IIは、昨年から欠品が続き、エンクロージャーのカラーもしばらくは一色のみの流通だった。しかし、継続生産に向けて着々と準備を進め、然るべきタイミングで新しいTD307MK2Aにシフトしていったのである。色も当初からの3色(ホワイト/グレー/ブラック)が改めて引き継がれた。

新旧のTD307を聴き比べてみると、明らかに新しいモデルの方が情報量で勝っているし、低域のレンジも拡大している。音がグッと前に出てくる印象もある。

私が最も驚いたのは、ステレオイメージがより立体的に再現された点だ。もとよりTDスピーカーは優れた空間再現力を有しているが、楽器の前後感や音場の奥行きがさらに3次元的になり、タイムドメインの狙いがより鮮明になったとさえ感じた。

開発担当技術者に、周波数特性のデータを見せてもらった。新旧モデルのグラフを比較すると、新型は中音域のアバレが少なく(よりフラットに近い)、高域の可聴帯域外のピークも抑えられている。繰り返すが、エンクロージャーのサイズや磁気回路は変更されていない。一体、どこが変わっているのかと技術者に食らい付くと(?)、「細かな要素の微調整」とこっそり教えてくれた。

中音域のアバレは、コーン部分を支え、ボイスコイルを保持するダンパー部の固さを吟味し、柔らかくしたことで改善されたという。この部分は、インパルスレスポンスにも影響する部分で、音が前に出るようになったのは、インパルス応答の向上によって明瞭度が高まったもの思われる。低域のレンジ感が拡大して聴こえたのもこの点が主な要因だろう。さらには、ボイスコイルインピーダンス値を見直し、中低域と高域のバランスを微調整している。20kHz超のピークを抑えられた点は、 センターキャップ裏側とボイスコイルボビンの接着方法の変更(主に塗布量とその位置)によって改善が図られた。

よりヴァーサタイルな適応力を身につけたTD307MK2Aは、TDらしさを高めつつ、その特有の魅力をさらに盤石なものとしたのだ。