先頃、「TD510MK2」と「TD508MK3」の2モデルが、2012年度グッドデザイン賞を受賞した。ご存じの方も多いと思うが、ECLIPSE Home Audio Systemsは過去にも初代モデルスピーカー「512」、アンプの「A502」を始め現在までシリーズの主要製品が同賞を受賞している。すなわち歴代製品が連続受賞していると言っても過言ではない。詳細はこちらをご確認頂きたい。

過去に遡ってみれば、オーディオ/AV機器がグッドデザイン賞を受賞した例は数多あるが、その多くはテレビやシステムコンポであり、スピーカー単体、しかも基本的に同じ形のモデルが、サイズや細部の仕上げこそ違えども、こうして何年も続けて受賞するということは、極めて希有なことだろう。それだけ5シリーズのデザインが優れており、なおかつ完成されたものとして、広く認められたことの証といっていいと思う。

その受賞の評価コメントの中で、(1)「2001年から自社の持つ卵形スピーカーエンクロージャのデザインフィロソフィを継承しながら現代の音環境に適した徹底した設計改善」と、(2)「すでにブランドアイデンティティとなっている特徴ある造形」、(3)「サウンドクリエイションの舞台に欠かせない存在になりつつあり信頼に繋がっている。またそれ自体デザインが寄与し活かされている事実」(以上「」内は原文のまま)という記述に、私は注目したい。

(1)からわかることは、審査員諸氏はECLIPSE Home Audio Systemsの歴史を踏まえた上で、最新モデルが前作からさらにブラッシュアップが図られたことをしっかり認識していることだ。つまり、単にデザインが優れているから賞に認定したのではなく、品質改善に対する弛まぬ努力を認めていると解釈することができるのだ。これは10年以上、この形状と、それがもたらす特性/性能にこだわってきたデンソーテンの関係者にとっては大きな喜びと励みになることだろう。(2)の言及も、卵形がECLIPSE Home Audio Systemsのアイコンになっているという認識からのものだ。

そして最も重要な点が(3)である。これは、音楽制作の現場において、そのデザインがいわば安心、信頼感を生んでいるということを表している。つまり、ECLIPSE Home Audio Systemsを使えば、音楽のために良い作業ができる事が約束されたようなもの、というイメージを使用者にもたらすと理解していいと思う。

以上の考察から、ECLIPSE Home Audio Systemsは、単にデザインの優秀さだけでなく、デザインを通してそのパフォーマンスにもお墨付きをもらったと考えてもいいのではないだろうか。

では、仮にECLIPSE Home Audio Systemsが今年ポッと出てきた商品ながらも、グッドデザイン賞を獲得できたとしよう。おわかりと思うが、当然今回のような評価コメントは上がってこないはずで、もしそうならば、外観の意匠面にプライオリティが置かれたコメントとなろう。私は、今回のグッドデザイン賞は、ECLIPSEのこれまでの軌跡と、その一貫した揺るぎないコンセプトも評価の対象となったように思える。長く続けることももちろん大事なことだが、その成果がきちんと評価されることで、伝承する意義がまた明確になるのである。