仕事柄、オーディオ・ビジュアル機器の魅力を語る商品試聴会の講師を務めることが多い。ECLIPSE TDシリーズスピーカーの試聴会も、これまで数え切れないほどやらせて頂いた。優れたスピーカーだから、2chステレオでも、5.1chサラウンドでも、来場者にご満足頂く事が多いし、講師としてもやり甲斐のある商品と思う。

ECLIPSE Home Audio Systemsは、大音量再生に向くスピーカーではないし、遠くに音を飛ばせるホーン型スピーカーのようなパフォーマンスは無理だ。したがって、大勢の人に対して、広いスペースで雄大に音を鳴らすようなデモは不得手である。

あらかじめスウィートスポットを絞って試聴エリアを限定し、そこに椅子を並べて限られた人数で実施することが多いのが、このスピーカーのデモの定石。椅子の数はせいぜい10脚。多くても15脚程度だ(5脚×3列)。

講師を務める身としては、大勢のお客さんに来てもらいたいという気持ちはいつもある。それは主催者であるデンソーテンにしても、あるいは販売店にしても同じ気持ちだろう。しかし、大勢集まったことで偏ったポジションに座らざるをえず、悪い印象でお帰り頂くのは、こちらとしては本意ではない。たとえ少人数でも、できるだけ良いコンデイション・ポジションで音を体験して頂き、良い印象を持ってもらう方が、主催者側(講師も含め)としては成果があったといえる。

となると、できるだけ多くの来場者によりベターな状況で音を体験して頂くには、一回当たりで人数を稼ぐのではなく、短時間のデモに止め、少人数で何サイクルも手際よく回していくのが良い。この辺りは本当に難しいところで、ファンを増やすには、量よりも質が問われるわけである。つまり、数字よりも中身だ。

この場合、内容をいかに濃いものにするかが講師の重要な役割であり、デモのコンテンツや解説のわかりやすさが問われる。個人的には、日頃ECLIPSE TDシリーズスピーカーを使っているので、コンセプトに対する明確なイメージと多少の慣れはある。しかし、デモの始まる前には、やはり毎回緊張するものだ。

ECLIPSE Home Audio Systemsは、ポンと置いてすぐにパッと良い音で鳴るようなスピーカーではない。どんな場所でも、デモの前はいつもシビアに調整、チューニングをしている。心髄を引き出そうとすれば、それなりのスキルが要求される、クリティカルかつセンシティブなスピーカーなのである。

だから、スウィートスポットにはまった時の音のよさは、他に代えがたいものがある。そんな経験をお客様にもぜひして頂きたくて、私もメーカー・お店のスタッフと一緒になって調整を追い込んでいる。

そこで改めてご容赦頂きたいのは、少人数でデモを行なうことが多いので、定員に達してしまった場合、入場をお断わり、あるいは次回、次々回にずらして頂く際、どうか憤慨されずにお待ち頂きたいということだ。決して後悔はさせないし、来て良かったと思って頂けるよう、毎回頑張っているつもりである。