スピーカーのカタログや取扱説明書、メーカーのWebサイト、あるいは雑誌などのスピーカーの記事には、必ずそのモデルのスペック(仕様)が記載されている。ほとんどの方は、ただ漫然とその数字や記載事項を眺めているだけかもしれないが、そこからどんなことが読み取れるのか、ECLIPSEのスペックと照らし合わせながら解説してみたい。

1)周波数特性
低音から高音まで、どれくらい広い周波数範囲を再現することができるかを表わす数値。範囲が広いほどスピーカーの性能としては優れていることになり、スピーカーユニットの数が多いマルチウェイスピーカーでは、広い周波数特性を確保しやすい。オーディオの全盛期は、実際に測定データがカタログ等に掲載され、そこからインピーダンス特性や歪み特性なども確認することができた。

ECLIPSE Home Audio Systemsは、フルレンジスピーカー1基だから、周波数特性のみを比べると、他社よりも不利だ。低域は30Hzまでカバーするスピーカーはざらにあるし、高域もいまや40kHz、50kHzまで達しているモデルが少なくない。

問題は、広い帯域をカバーしていても、ところどころに特性の大きな山谷があると、それがそのスピーカー固有の音の“クセ”につながることだ。できるだけフラットな特性が望ましい。また、周波数特性からは位相特性が読み取れないので、ECLIPSEが掲げるタイムドメイン的性能がどうなっているかが不明である。

もうひとつのキーポイントは、括弧内にある-10dB(デシベル/音の大きさの単位)という表記。これは、平均的なレベルから10dB落ちた位置で線を引き、その間の特性を示している。-10dBともなると、結構大きな音量のダウンであり、特に低域においては無視できない音量差になる。海外メーカーのスピーカーでは、-3dBで表示しているところもあり、-10dBの表記に比べたら周波数の広さで不利だ。こうした点も踏まえて比較しなければ意味がないことも覚えておきたい。

2)能率
出力音圧レベル、または感度と表記することもある。一定の電気信号を加えた時、どのくらいの強さの音が得られるかを示すもので、日本では1W(ワット)に相当する正弦波電圧を加えた時、スピーカーシステムの正面軸上1mのポジションにマイクを置いて測定した値で規定されている。通常は響きがまったくない無響室で測定される。

この数値が大きければ大きいほど、小さな電気信号で大きな音が出せることを意味する。ホーン型スピーカーはその典型で、大きな音を遠くまで飛ばすことを目的とする面があるからだ。しかし、大きな音が出ればいい音かというと、それもまた真理でない。家庭内で常識的な音量で聴く場合は、88dB/W/mもあれば十分な能率と私は思う。ただし、アンプに負担をかけないという点では、数値が大きいに越したことはない。ECLIPSEの能率は、やや小さめといえる。