小原由夫の
Sight&Sound
ver.2
vol.56
ECLIPSEの海外での評価
ECLIPSEスピーカーの日本での評価は、皆さん既にご承知の通り。一方で海外市場でも評価が高いことをご存じだろうか。とりわけ欧州、特にイギリスにおけるそれは、2001年のデビュー作512の導入当初から、 日本に負けず劣らず高く評価されているのである。
イギリスのAV専門誌「WHAT HiFi」において、ECLIPSEスピーカーは5つ星を獲得している。日本メーカー製スピーカーに5つ星が付いた例は、極めて希有である。しかも1機種だけではない。生産完了のモデルを含め、同社のWebサイトには現在6機種が掲載されている。つまり、多数のECLIPSEスピーカーが最高得点を獲得しているのである。
最新モデルのTD510ZMK2の記事で指摘されているのは、優れたトランジェント特性(インパルス・レスポンス)の実現による明確なステレオイメージ再現だ。レビューアーは、約2.5mの試聴距離を取り、自分のすぐ前で音の放射が交差するような角度に調整した上で、英国の女性ポップス歌手/ケイト・ブッシュのアルバム「雪のための50の言葉」を聴き、ヴォーカルの定位が素晴らしく安定して感じられたと言及している。これは日頃私がECLIPSEスピーカーのパフォーマンスで形容する、“ホログラフィック”のような音場イメージと相通じるものがある。
他にはベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第5番」のハイレゾ音源や、プリンスのアルバムを試聴しながら、奥行きに深い立体的な音場再現に関して、マルチウェイドライバーを採用したスピーカーと対比させたり、しっかりとした低音ダイナミクスについて触れている。
こうした評価は、私がECLIPSE スピーカーに抱いている感覚とぴったり合致している。つまり、国柄や人種が違っても、このスピーカーのコンセプトはしっかりと理解され、変わらない普遍的評価を得ているという証でもあるわけだ。
エンクロージャー形状やシングルドライバーの採用、さらにはその固定方法が、ECLIPSE スピーカーのその唯一無二のパフォーマンスに大きく影響(寄与)していることは、このレビューアーも挙げているが、繰り返し指摘していることは、マルチウェイドライバーを採用した競合他社モデルと、シングルドライバーのECLIPSEならではの空間表現の違いだ。万が一、ここに気付かないようなことになれば、ECLIPSEの価値の大部分を見落とすことになる。そのことに明確に言及したこのレビューアーの耳のよさ、感性のよさは、確かだ。
もちろん全面的な礼賛ではなく、周波数レンジの狭さに関するエクスキューズや、好き嫌いが分かれる音、ということをはっきり述べている点に感心させられた。私も大いに共鳴するところである。
一方、TD508MK3の記事では、デザインの美しさに触れながら、それが単に美しさからきたものではなく、エンクロージャーの堅牢さと共に、音質の追求によって生み出されたものであるという点をまず述べている。具体的な音質のコメントにおいては、TD510ZMK2と共通した部分が多く見受けられるが、他社モデルを具体的に引き合いに出しながら、それらの音が曖昧で漠然としたものだと指摘しているところがとても興味深い。これらのスピーカーは日本国内でも一定の評価を得、愛用者も多いのだが、価格的にもサイズ面でも不利なTD508MK3が、より好ましい音と述べているこのレビューアーを、私は実に潔いと思った。
そして、ここでもやはり低音に不満があることは記しているし、重厚さやダイナミックなパンチが足りないと言い切っているが、それを補って余りある音質的な魅力がTD508MK3を5つ星足らしめたと結んでいるのだ。
この2つの記事を読んで、私は改めてECLIPSEスピーカーの設計哲学、タイムドメイン理論が、英国においても十分に理解され、それが姿形を含めてオリジンなものとして認められていることを、同様に理解し、評価している者として、とても誇りに思った次第である。