生産完了から半年ほどが経過し、ECLIPSEの製品ラインナップから消えていたサブウーファー。ようやくその次期モデルが発表された。しかも、一気に3モデルが追加されたのだから恐れ入る。

TD725SWMK2は、その名称からも明らかなように、TD725SWをベースに各部をブラッシュアップしたマークII版だ。TD316SWMK2も、デザインこそまったく異なるものの(TD725swをそのままダウンサイズしたようなキュービックスタイルを採用)、円筒型キャビネットに上面吹き出し型のユニットレイアウトを採っていた316SWの後継機種である。TD520SWのみ、20cmウーファーを搭載したまったく新しいモデルで、TD725SWMK2と同様に、ユニットを背中合わせに配置、ビルトインした「R2Rフローティング構造」を採用しており、姿形からもTD725SWMK2の弟分であることがわかる。

上位2モデルの特徴は多くの部分で共通しているので、区分けせずに記すことにする。特徴的なのは、先代のデザインを彷彿させるキュービックスタイルを採りながら、ラウンド形状を採用し、仕上げをブラック光沢塗装としたところである。特にこの光沢は、7層の重ね塗りによるものというから贅沢だ。

TD725SWMK2の内容積は、先代機から比べて約26%アップ(57L→72L)。角をラウンドさせたこともあって、外寸は縦・横・高さとも約30mm増し、重量も9kgほど重たくなっている。搭載されたウーファーは同じ25cm口径だが、アルミダイキャスト製のフレームをまとい、ケブラー繊維が混入されたパルプ系振動板を新規採用。軽さと剛性とを巧みに両立させた模様である。ユニットのFoは25Hzに下がり、より深いディープバスの再現が期待できる。

大幅に改善されたのは、装備面と機能面(使い勝手)だ。従来機で前面に装備されていたのは、電源や位相のインジケーターのみだったが(リモコン操作を主体とした設計コンセプトのため)、今回のニューモデルは操作パネルを設け、いちいち背面に回って音量やクロスオーバー周波数を切り替えなくてもよくなった。ボリュウムレベル等がLEDのバー表示になったことで、状態の把握もしやすくなった。

大きなアドバンテージがもうひとつ。ステレオシステムにサブウーファーを組み込むような場合(2.1chシステム)を考慮し、ライン入力を2系統としてバランス入力端子を併設したのである。この装備の充実により、ステレオシステムとサラウンドシステムでサブウーファーを併用したケースでも、ケーブルをつなぎ直さずに入力セレクターの選択のみで切り替えられるようになったのである。クロスオーバー周波数の無段階連続切替え、位相切替え、モード切替えなどは従来同様に行なえ、リモコンも標準添付されている。

ECLIPSEが目指した低音再生は、インパルスレスポンスがしっかりとコントロールされた、尾を引かないクイック&スムーズな低音。俗に言う、立ち上がり/立ち下がりの速い低音である。それは、ウーファーユニットのピストニックモーションのリニアリティも重要だが、その反作用を巧みに相殺する「R2Rドライバー」と、振動をエンクロージャーに伝達しにくいフローティング構造にあるように思う。箱の共振を活用して低音をブーストするような質の悪い低音ではない。

TD725SWMK2を試聴する機会を得た。非常にクリアーかつタイトな重低音が軽々と繰り出されてくる。ただし、それだけの印象ならば、既に先代のTD725SWで十分に体験したきた要素である。

重低音というと、とかく獰猛で荒々しく、ヘヴィーで圧迫感の強い低音を思い浮べる方が多いと思うが、TD725SWMK2の重低音は、そこに一段と速いスピード感と、澄んだクリアネスがある。野球に喩えれば、手元で伸びる豪速球というイメージだ。

TD725SWが登場するまでのサブウーファーは、箱の共振等を巧みに利用した、いわば量感と厚みで威圧するような重低音だった。TD725SWは、そこに新たに鋭敏さと忠実さという概念をもたらした。それはまさにECLIPSEのスピーカー同様の、インパルス応答、トランジェントのよさである。

量のある低音ではなく、質のいい、活きのいい低音とは、こういう低音なのだ。