日本国内のみならず、海外市場でも人気を博しているイクリプスのアクティブ型スピーカーTD-M1。最も多い使用用途は、PCと組合せたデスクトップモニターだろうが、他にも様々な使い途が考えられている。Airplayといった無線対応がその活用フィールドを広げていることは確かだし、iPhoneやiPad等との携帯端末を用いた音楽再生の可能性もあれこれ模索されている。

そこでというわけではないが、イクリプスの新たなエンドースとなられたPixerのアートディレクター/堤大介氏の寄稿を拝読し、私も賛同するところがあったので、今月は動画撮影におけるTD-M1の活用について話してみたい。

昨今、非常に高性能な動画撮影用の小型カメラが登場し、アマチュアでも臨場感たっぷりの美しい映像が撮影できるようになった。中には4Kに対応したカメラもあり、生々しい高精細な動画撮影が現実味を帯びてきた。しかし、そうしたカメラに装備されているマイクは、撮影部のスペックに対して見劣りするものが意外に少なくない。こだわる人は別途マイクを用意して臨むほどだ。

ここではマイクの話はさておき、実際に撮影した動画を編集したり、楽しむ際の音声について考えたい。

そうした用途に使われるモニタースピーカーの要件としては、音を脚色することなく、できる限りオリジナルに近い質感や音色を再現できることに相違ない。アートディレクターやクリエイターと呼ばれる人たちは、そうした点を最も尊重しているはずだ。何故ならば、音が湾曲されてしまっては、作品のリアリティ、ひいては制作過程に支障をきたすからである。

一方で、オリジナルの音声にイコライザーなどのエフェクト処理を加える場合も、オリジナルの音声をいかに正確に再現するかによって、イコライザーの微妙な掛かり具合の違いを忠実に描写することもできる。この辺りは、過渡特性や正確さを重視したイクリプスTDのまさに真骨頂であろう。

私は先頃、40型の4Kテレビを自宅の仕事場に導入し、併せて使い始めた4K対応ウェアラブルカメラをロードバイク用のヘルメットに固定して、地元の観音崎や三浦海岸の映像をロードバイクに乗りながら撮影して楽しもうと思っていた。あいにくとテレビとカメラの接続に不都合が生じ、現時点では4K動画は楽しめないことが判明したのだが、フルHDでも十分に美しく、迫力のある映像が撮影できている。

そのテレビ視聴時のモニターとして、TD-M1を使ってみたところ、走行時にタイヤが拾ったロードノイズ(路面状況によって音も変わる)や風の音、坂道を登る際の自分の息の荒さ、さらには周囲の環境音がリアルに再現され、ちょっと驚いたのだ。

ハンドルに備え付けられたシフトレバーのカチッカチッという変速時の音も、あるいはカーボンホイール特有のブレーキング時の「シューッ!」という音さえ克明に描写する。それが走行音にかき消されずに明瞭に聴こえる点に、イクリプスのコンセプトの正当性を再認識した次第である。

もうひとつ、改めて感心したのは、その空間表現力だ。スピーカー2本のステレオ再生なのに、まるでサラウンド環境で試聴しているような立体感が醸し出される。走りながら拾った周囲の音が、風切り音に邪魔されずに思いの外クリアーに聴こえるのである。アブラ蝉の声が走行に伴って遠ざかっていく様子がきれいに再現されたし、トンネル内ではロードノイズが反響している様子がわかる。浜辺で遊ぶ子供の歓声がやや距離感を伴って聴こえた点にも感激した。

TD-M1でサウンドデザインやミキシングをしたら、さぞやクリアーで生々しい音声トラックが編集できることだろう。今後の動画撮影が楽しみになってきた。

また、最近増えてきているYou Tubeに投稿されているクォリティの高い動画や、有料配信サービスでの映画、スポーツ鑑賞などにもTD-M1を使用すれば、映像を昇華させる新たな音の世界を楽しむことができるのではないかと感じている。