CDのセールスが世界的に急激に落ち込んでいる昨今(それでも日本は堅調と聞くが)、音楽ストリーミングやビデオ・オン・デマンドの隆盛など、フィジカルなパッケージソフトの在り方が問われていると言われている。そんな中、4K解像度を誇る『ウルトラHDブルーレイ』(以下UHD・BD)がいよいよこの16年に立ち上がる。リスナーを取り囲む、現実さながらの高音質立体音場“イマーシブ・オーディオ”もそれに相まって、絵と音のより一層高密度な世界が待ち構えているわけだ。

一方で、大画面化/高精細化を辿る昨今の4Kディスプレイ(テレビ)は、薄型化によって音声部がどんどん蔑ろになってきている。中には専用ボックスを設けて高音質を謳うモデルもあるが、それはほんの一握り。大半のテレビが、狭いベゼル内に小さいドライバーユニットを無理矢理押し込んだ、チープなオーディオシステムである。これではUHD・BDの醍醐味はとても享受できない。やはりスピーカーを追加してテレビの音声を強化するしか、賢明な方法はないのである。

そんな時、イクリプスTD-M1は非常に役に立つ。今回は、世界初のUHD・BDプレーヤー/レコーダーのパナソニックDMR-UBZ1を組み合わせ、4Kコンテンツを含め、さまざまなメディアでTD-M1とUBZ1との親和性について探ってみたい。

ところで、UBZ1の音声出力は、アナログ(ステレオ)と光デジタル出力の2系統しかなく、TD-M1には生憎と光デジタル入力が非装備だ。ここでD/Dコンバーター等を使ってデジタル変換するか、USB DACを使ってヘッドフォン出力から信号を取るといった選択をしなければならないが、システムが大袈裟になることを避けるため、今回はポータブルUSB DACを介し、そのヘッドフォン出力から音声を取出してTD-M1に接続することとした。用意したDACは、CHORD/Mojoである。

①UHD・BD試聴

「るろうに剣心/京都大火編」のUHD・BDは、UBZ1の購入特典として添付予定のUHD・BDタイトル。今回はプルーフ盤をいち早く借用しての視聴と相成った。冒頭の深夜のシーン、静謐な夜の帳に銃を持った警察隊が押し入る様子。太刀の音、すなわち刀がぶつかる際の音の甲高さが生々しく、そのトランジェント感にハッとさせられた。

Ch.5の剣心と宗次郎との太刀回りのシーでも、トランジェントHDがすこぶるよく、くっきりと響くのがわかる。その音の背景として、風を切る音、砂利の音などが暗騒音的に聴こえる。さらに緊張感を煽る琴の音楽。気をつけていなければ聴き逃してしまいそうなそうした背景音だが、これがあるのとないのとではシーンの臨場感が違う。結果として、より迫真的なシーンになるというわけだ。こうした音の描き分けが明瞭にできているところが、他のスピーカーとは一味違う、TD-M1の卓抜さといえる。

②音楽コンテンツ

昨年は音楽BDコンテンツ豊作の年と個人的には認識している。中でも出色が、パット・メセニー・ユニティ・グループの「KIN」だ。サックスを加えた5人編成に、近年メセニーが執着している自動演奏装置「オーケストリオン」を加えた、壮絶なスタジオライヴ作品である。ここで肝心なのは、フィジカルな人力演奏と機械の自動演奏によるクールなニュアンス、そのアレンジの緻密さとハイレゾならではの情報量の多さだ。

<RISE UP>のイントロは、2台のギターに様々なパーカッション類が絡み、独特の疾走感がある。パットのピッキングの克明さ、手拍子やマリンバ等の音の鮮明さがわかる。そこにサックスが重なり、実にスペイシーでファンタジックなメロディーが浮かび上がる。

それにしても、TD-M1はわずか8cm口径のフルレンジドライバーだが、どっしりと腰の座った低音を繰り出してくる。ビートの実在感が素晴らしいのだ。ベースラインを軸とした、フレキシブルなドラムのビートが安定している。

③ハイレゾ再生

UBZ1の「お部屋ジャンプ機能」(DLNA)を使うことで、ネットワークで共有しているDLNAサーバーからの再生が可能となる。これがなかなかいい音で、クリアーかつ立体感に富んだスムーズな再生音が楽しめた。当然ハイレゾ音源であれば、TD-M1はその魅力を余すところなく伝えてくれる。

「ピンクフロイド/エンドレス・リバー」では、スライドギターのソリッドなテーマメロディーと、その後ろのアンサンブル/ビートを細やかに再現。とても精巧な世界観が現出した。それにしても、テレビのリモコン操作でこんなに簡単にいい音が楽しめていいのだろうかと、少々後ろめたい気持ちになるのは、私だけだろうか?

④CD再生

CD再生時でもUBZ1の「シアターモード」は有効。デジタル出力には必要最小限の回路しか動作していない状態のピュアなデジタル信号が送られる。「ホイットニー・ヒューストン・ライヴ/ハー・グレイテスト・パフォーマンス」では、全盛期のホイットニーの艶っぽく瑞々しい声がスーッと浮かび上がってくる。その滑らかな歌声は、豊かな声量と技巧に支えられて、実に生き生きと伸びやかに響く。そう、まるでテレビの前に天国から小さなホイットニーが降りてきたかのようなリアリティと生々しさだ。

「BDレコーダーでしょ、CD専用機には適わないのじゃない?」なんてバカにしてはいけない。パナソニックの音質チューニング担当エンジニアは、それこそ徹頭徹尾、同じCDを何回も試聴して音質を練り上げてきたのである。そんじょそこらのCD専用機、明後日来いっていう感じなのだ。

そうした送り出しのハイクォリティ振りをストレートに再現してくれるTD-M1も凄い。改めてそのポテンシャルの高さに感心した次第である。