音楽の楽しみ方は、人それぞれ。カーオーディオで楽しんでいる人もいれば、通勤通学に.スマホや携帯音楽プレーヤーでお気にいりのナンバーを聴いている人も多いことだろう。いわゆるオーディオマニアと呼ばれる人は、そうした人たちと比べると、ほんの一握りかもしれないが、手塩に掛けたオーディオシステムで日々音楽と接している人も決して少なくない。

かつてはオーディオにそこそこ凝っていたけれども、今は知識も時間も追い付かないため、マニアックに追求するのを止めている人も多いと聞く。それでも音楽は楽しみたいので、PCとその内蔵スピーカーで聴いているのだと…。ただし、そのクォリティには決して満足していないし、いい音でないのを重々承知の上で音楽鑑賞しているというのである。

昨今話題のハイレゾやネットワーク/ストリーミング再生は、関心はあっても設備投資や設定が面倒そうなので敬遠している。その一方では、かつて集めたCDの資産がかなりある。それらを手軽にいい音で聴きたい。大袈裟でなく、リーズナブルなサイズと出費で音楽を楽しみたいというニーズは確実にある。あるいは、これまでイヤフォン、ヘッドフォン中心に音楽を聴いてきたけれども、家ではスピーカーでしっかり楽しみたいという若い音楽ファンもいることだろう。

ECLIPSEのCDR1 PACKは、そうしたケースにぴったりのシステムコンポ。スピーカーとCDレシーバーCDR1の組合せで成り立っており、スピーカーはTD307MK2ATD508MK3のいずれかを選ぶ形だ。CDレシーバーは、CD専用設計ドライブを搭載したハーフコンポサイズで、スピーカーを強力にドライブする3段インバーテッドダーリントン回路を搭載する。AM/FMチューナーも内蔵だ。ちなみにこれらのパッケージは、1000台限定のプレミアムモデル。

本体の機能/装備はシンプルにまとめられているが、光デジタル/同軸デジタル端子を備えているので、テレビやBDレコーダーと接続することでAVシステムとしても発展可能。アナログRCA端子には、USB-DACやフォノイコライザー内蔵レコードプレーヤーも接続できる。こうしてみると、拡張性もしっかりと考慮されているのがわかる。スピーカー端子は金メッキのネジ式タイプ。ヘッドフォン出力も装備しているのは見逃せない。

CDR1 PACKのもうひとつの魅力は、購入特典としてCHORD社のスピーカーケーブルがプレゼントされること。CHORDはハイファイオーディオ用ケーブルを開発・製造している英国の名門ブランドで、ECLIPSEスピーカーを研究用のリファレンスとしている。プレゼントされるケーブルは非売品だが、数多あるミニコンポ付属ケーブルとは格が違う。造りもしっかりとしており、1万円ぐらいの市販品と比肩し得るクォリティと思う。バナナプラグが付いており、スピーカー端子にしっかりと勘合、結線できる点も嬉しい。

私が今回試聴したのは、TD508MK3とCDR1の組合せだ。TD508MK3については、改めて言及する必要もないだろう。タイムドメインの考え方に基づき、フルレンジドライバーを卵形のエッグシェル・エンクロージャーに収めたもので、トランジェント特性を意識し、忠実再生を目指したものだ。マルチウェイドライバーのスピーカーにありがちなクロスオーバーネットワークでの色付け、位相ズレもなく、エンクロージャーの共振も極小である。

セッティング時の注意点としては、できるだけしっかりとした台(家具)やオーディオラックにセットすること。特にTD508MK3は、がっちりとしたスピーカースタンドに設置し、付属の六角レンチを使ってエンクロージャーの仰角をリスナーに向けて確実に調整したい。

試聴した第一印象は、思いのほか低音がしっかりと出るということ。量感もあり、常識的な範疇での音量ならば特にパワー不足は感じない。CDR1のアンプ部の性能の高さ、威力といってもいいだろう。

女性ヴォーカルを再生すると、宙に音像がポッと浮かぶ。それはまさしくイリュージョンというか、ホログラフィック的であり、克明な厚みを伴ったリアルな音像フォルムが実感できる。そうした音像描写がイクリプスの特徴でもあるのだが、CDR1で鳴らすと、音像の隈取りが一段と明瞭になり、実在感がより高まる。

ピアノトリオは、3人の楽器の配置がジオラマ的に描写され、小さいながらも精巧な音場感が見通せた。透き通ったクリアーなサウンドステージの中、ピアノ、ベース、ドラムスの音像が前後感を伴ってくっきりと居並ぶ様子がイメージできる。

クラシック(オーケストラ)の再生では、ミニチュア模型を俯瞰しているような立体感を感じた。奥行きやステレオイメージの再現力に長けたイクリプスだが、そうした長所がさらに強化され、伸ばされているような印象だ。和声の細部まで丁寧に分解され、鮮明に聴き取れる。

次回は、本機の装備を活かした拡張性について探ってみたい。