小原由夫の
Sight&Sound
ver.2
vol.72
CDR1で聴くレコード
レコードのよさが見直されているという。しかもブームは世界的な動きで、新譜の生産も盛んに行なわれている。日本でもメジャーレーベルが新たにレコードのカッティングシステムを導入し、フル稼働状態という。
こうした動きには、どんな要因が考えられるか。ひとつには、若者にとってレコードが新鮮なメディアであること。30cm四方のジャケットアートに文化としての価値を見出だし、レコードはかっこいいという観点から親しんでいる。
イクリプス CDR1は、デジタル入力とアナログ入力を備えているが、今回はそのアナログ入力にレコードプレーヤーを接続して楽しんでみよう。
ここで肝心なことは、レコードプレーヤーならば、何をつなげてもいいかというと、そうではない。CDR1にはレコード再生に必要なフォノイコライザーが内蔵されていない。したがって、外付けのフォノイコライザーを用意した上でレコードプレーヤーを接続するか、フォノイコライザーを内蔵したレコードプレーヤーを用意するかのいずれかだ。
今回用意したティアックTN-350は、フォノイコライザーを内蔵し、オン/オフ切替えができるのが特徴。加えてMM型カートリッジも付属しているので、すぐにレコード再生が始められる。本機はアルミダイキャスト製ターンテーブルを搭載したベルトドライブ型プレーヤー。堅牢な木目調キャビネットはMDF製で、ハウリング等の振動にも強い設計だ。また、USBデジタル出力も搭載しており、レコードの音をパソコン等にCDクォリティで録音することもできる。
では、イクリプスで聴けるレコードならではの魅力とは何だろう。それは一言でいえば、音の実体感と密度だ。
フルレンジドライバーを採用するイクリプスのスピーカーは、定位感、臨場感の再現に長けている。クロスオーバーネットワークを介することなく、マルチウェイユニットのスピーカーのように帯域毎にも分割されないので、音の鮮度が落ちずにスピーカーからストレートに放出される。また、そのコンセプトからは位相が狂う要素も少なく、音が立体的に再現される。そうした要件が音楽を生々しく聴かせてくれる。つまり、イクリプス特有の正確さが実体感につながるわけだ。また、レコードの音は温かみや自然さがあるといわれるが、そうした音色の違いをイクリプスが素直に再現してくれる。
乗りのいいハードロックを聴くと、ビートをしっかりとキープしながら、細部の描写を決して曖昧にしない。ギターソロもくっきりと迫り出すし、ヴォーカルの定位は克明。懐かしい音なのに、新鮮ささえ感じられる。
一方でクラシックは、ヴァイオリン協奏曲を聴いた。オーケストラが奏でる優雅なハーモニーの中からヴァイオリンがスクッと屹立する。その立体的な音場感は、眼前で小さなオーケストラを聴いているかのよう。ピチッパチッというレコード特有のスクラッチノイズも、イクリプスで聴くと何故か気にならない。
昔よく聴いた思い出の一枚を棚から引っ張り出して懐かしむのもよい。ジャケットのアートワークが気に入って買ったアルバムを眺めながら聴くのもいいだろう。レコードで楽しむ音楽は、リラックスした安息の時間へ誘ってくれる。そこにイクリプスがあれば、楽しさもなお一層深まるというわけだ。