作曲家・音楽プロデューサー・キーボーディスト

ホッピー神山

繊細な部分もECLIPSEはうまく伝えてくれる

作曲家・音楽プロデューサー・キーボーディストとして、音楽レーベル「ゴッド・マウンテン」を運営し、国内外の先鋭的なアーティストとボーダレスに活動するホッピー神山さん。近年は八丈島に生活の拠点を移し、豊かな自然に囲まれた環境で音楽活動に取り組み、ご自宅では「TD307PAⅡ」を使用されています。今回は東京でのハードスケジュールの合間をぬってインタビューに応じていただけました。

ホッピー神山さんはフルオーケストラのスコアも書かれるようですね?

そうなんです。自分のソロアルバムでもフルオケがありますし、J-POPのプロデュースやアレンジものでも、生のStringsやフルオケの曲を書くことはよくあります。自分でアレンジして譜面を書かないと気がすまないので、もう25年位自分でやっています。

最近はアンジェラ・アキさんのアルバムなどでもやっていて、一昨年前に出したアルバムで2曲、今年出したアルバムで2曲ほどアレンジなどを担当しています。その中の1曲は混成合唱も含めた約40~50人編成のもので、レクイエムという11分もあるプログレのような大曲でした。アンジェラさんは日本で活動される前は、ワシントンDCに住んで音楽活動しておられましたので、まったくの洋楽シンガーであり結構マニアックでもあるんです。

それで一昨年のアルバム制作の際、アンジェラさんがスタッフに「日本でヴァン・ダイク・パークスのようなオケ・アレンジ出来る人はいない?」と聞かれたところ、スタッフは「ホッピー神山しかいない!」と推薦してくれたようです。以来、アンジェラさんに信頼されて一緒にやっているという具合です。有能な歌手の方に信頼されて仕事が出来るという事は本望ですね。でもJ-POPからの依頼の場合、風変わりな曲や変わったコンセプトの時が多いです。私はJ-POPの王道に居るタイプではないので。(笑)

ECLIPSEとの出会い

ECLIPSEは、6~7年前からオーディオショップで試聴するたびに、その素直な音質が良いと感じ、自宅での音楽試聴やMix作業、スタジオでの録音&Mix作業で使ってみたいと思っていました。今日はシリーズ最高峰の「TD712zMk2」を聴かせてもらっていますが、自宅のTD307PAIIと同様、ハイハットの上の方、だいたい6~8kHz辺りの音の質感がとても解かりやすいです。

一般的には中域が解かりづらいスピーカーがとても多いですね。高域とか低域がゴーンって出るのはオーディオマニアが家で聴く分には良いかもしれないけど、中域が解からないと音作りって難しいんですよ。スタジオも一時期どこも同じ様なラージモニターを導入したんですけど、あれもあまり好きではなかったんです。

周波数特性は確かにフラットかも知れないけど、音がとても解かりづらい。それと良く聴こえ過ぎるんですよね。普通に聴くだけだったら良いのかもしれないけど、作る側だったらそこで「良い音だ!」と思って家に帰って自分のシステムで聴くと、とてもショボイ音に聴こえてしまう。作る側にとっては、とても危険なスピーカーですね。

だから家で作品のチェックをするときでも耳が慣れると危ないので、(笑)レンジだけに偏ったスピーカーは使わずに、中域がよくわかるスピーカーを使うようにしています。だから昔からずっとECLIPSEみたいに1ウェイ(フルレンジ)派ですね。1ウェイの良さをピアノ演奏に例えると、鍵盤のタッチがどのくらいカッチリきているかという感じまで良く伝わってきます。その感覚が変わると演奏の感じまで変ってしまう。タッチフィーリングは演奏者にとっては大事なんです。そういう繊細な部分もECLIPSEはうまく伝えてくれます。

ムードに関わる部分が良ければ音楽ってすごく良く聴こえます。そのムードの良いところをどれだけうまく再現できるかという点もHi-Fiスピーカーやオーディオ装置のとても重要なところだと思います。

最近の録音・編集機材は、Pro Toolsなどのように完全にデータ化されているので適当な音にはならずに必ず同じ音になってしまいます。でもアナログ時代のファジーな感じというか適当な感じというか、なかなかいうことを聞いてくれずに臨機応変で対応しなくちゃいけないような機材を使う時もスリルや味があって好きです。

テープとか、今だに録音で使っているマイクなどのアナログ機器には、録音してみてからでないと解からない事あります。要はそういった適当な感じですよね。「空気感」っていうものもシミュレーションしないと出てこないので、テープだとテープの適当な歪だとか、そういう部分のシミュレーションによってつくられる事もありますから。

だから演奏した人とかエンジニアなど録ってる人のセンスとか感覚次第で全然違います。そういう点をきちんと再生してくれるという事も自分にとっては大事な部分です。

ホッピー氏にとっての八丈島

昔は観光客も多かったようですが今は随分減っています。地元の方にはつらい部分もあると思いますが、自分にとっては八丈島の持つ豊かな自然にゆっくり浸ることが出来ています。魚もおいしいですよ。(笑)

金目鯛なんて都会では高級魚でしょうけど、こちらでは安く簡単に手に入ります。本当に魚や野菜には苦労しませんね。毎朝のように玄関先にご近所の方々が置いていって下さいますから。(笑)

八丈島には八丈太鼓という和太鼓の文化があり、今でも地元に根付いています。和太鼓というと、鬼太鼓座(おんでこざ)とか鼓童(こどう)の大太鼓をイメージされる方が多いと思いますが、本来の和太鼓というのはもっと小さいんです。

2年前には、島在住の八丈太鼓名手の太鼓歴50周年記念コンサートが開かれ、林英哲さんや鼓童など世界的なプレーヤーが八丈島に集まってコンサートが開催されました。今でも多くの家庭には八丈太鼓があって、夜お酒が入ると大人も子供も一緒になってみんなで太鼓を叩きながら踊ります。とても楽しそうで、そういう輪の中に自分も入って一緒に、というのが大好きです。

八丈島にいると自然がいっぱいで人混みなどは無いので、知らない人が1m以内に近寄ってくるということはありません。しかし飛行機で1時間ほど行けば、島とは正反対に人が身体に触れるほど近寄ってくる都会があります。

仕事上、島と都会とを行き来することが多いのですが、1時間程で環境が急変してしまうことがストレスというか、恐いという感覚です。自然な感覚とか環境とか、そういうのが今の自分にとっては1番大切なことなのかも知れません。

取材協力:サイデラパラディソ/オノセイゲン氏

もしもし、ピアノが弾けますよ
2007年発売 2,300円(税込)

1.天動説
2.善良な天使
3.卵のように軽やかに
4.コントラファゴット
5.肩甲骨
6.魔法の蜜と黄金の雨
7.ブーダン ノワール
8.眠りのタペストリー
9.哺乳類の手帖
10.大きな階段

運命のアリア
2009年発売 2,730円(税込)

1.ラグビー
2.バレエ組曲「ロミオとジュリエット」より
モンターギュー家とキャピュレット家
3.5つのピアノ曲 第1ホ短調
4.壺の莫~Love for sale
5.ゴルドベルク変奏曲
6.組曲「仮面舞踏会」よりワルツ
7.答えのない問い
8.マントラの海~Mantra
9.「ブラジル風バッハ 第5番」よりアリア
10.ピーターと狼
11.「ニッカーボッカー休日」より
セプテンバー・ソング

私がピアノ
2009年発売 3,300円(税込)

1.半世界人
2.フーガの壁と、敗退の夢
3.剥製のマーチ
4.奇妙な世界史
5.兜と撞球
6.投ゲ槍ノ雨
7.ナマコの外出
8.鬚オムレツ
9.投ゲ槍ノ雨
10.広がる空
11.瞑想巨人

profile

ホッピー神山 (作曲家・音楽プロデューサー・キーボーディスト)

1978年、プロデビュー。

1983年「PINK」に参加、80年代を代表する音楽プロデューサー、キーボーディストとしての評判を確立。90年代初頭には東京のart-noise-punk-funk-alternativeシーンを引っ張る重要な人物となる。

1990年、1991年に東芝EMIよりソロ・アルバム「音楽王・1」「音楽王・2」をリリース。

1993年、自ら「GOD MOUNTAIN」レーベルを立ち上げ、1995年にはアンビエントレーベル「GOD OCEAN」をも立ち上げる。海外のラジオ局での年間上位チャートインを数々獲得。

その後、GOD MOUNTAINからのリリースは70タイトル以上にも昇る。
1994年宮本亜門演出のミュージカル「サイケデリック歌舞伎・月食」の音楽監督を担当(美術:横尾忠則、脚本:橋本治)。

1994年より始めたバンド『PUGS』が1996年全米デビュー、1997年には3ヶ月に渡る全米アリーナツアー『ローラパルーザ・フェスティバル』に参加。

1999年には、フランスのレーベルSONOREより室内楽を中心としたアルバム「Juice&Tremolo」を発表。ヨーロッパで話題になる。
再び2003年、God Mountainをリニューアル、リリースを再開。
2004年、Bill LaswellとのDuoアルバム『Navel city/No one is there』を発表。

2005年、60人編成のオーケストラとコンボバンドによるソロCD+DVD『意味のないものは、意味がある』を発表。

2006年、伝説のブリティッシュバンド、ソフトマシーンとの合体バンド『ソフトマウンテン』CDをリリース。

2006年12月、チェコのプラハのシアターにて、映像とピアノとボイスによるソロ・パフォーマンス。チェコ全土のソロツアーも敢行。
2007年、初のピアノソロ・アルバム『もしもしピアノが弾けますよ』をリリース。

2008年7月、ドイツ/アウグスブルグでのブレヒト祭に招聘され,参加。ポーランドのフィルム・フェスティバルで、ソロ・コンサート。

2008年、第2弾ピアノソロ・アルバム『私がピアノ』をリリース。
一方、プロデューサー*アレンジャーとしては、国内では小泉今日子、吉川晃司、氷室京介、センチメンタル・バス、Chara、Judy&Mary、アンジェラ・アキ、テレサ・テンなど2000曲を越えるアレンジ&プロデュースの仕事を過去手掛け、TVCMでも2004年のトヨタ・カローラフィルダ-『明日はどこへいこう』など多数のヒットCM音楽を手掛けている。

レーベルを主宰し、世界中のネットワークを築き上げ、多数のバンドにボーダレスなパフォーマーとして参加している。