ハイレゾ音源
小原由夫のサイト・アンド・サウンド(Ver.2:第27回)

PCオーディオの台頭と共に、最近聞くことが多くなった、“ハイレゾ音源”なるキーワード。これは、ハイレゾリューション音源の略で、高分解能な音楽ソースのことである。混同されがちな“ハイデフィニッション”は、HD、つまりテレビ映像方式の「ハイビジョン」などでお馴染みの高精細という意味だ。

では、何を対照として高分解能と言えるのか、ということだが、言うまでもなくそれは、CDのスペック。すなわち、44.1kHz/16ビットのデジタル信号(リニアPCM)の規格で、一般にハイレゾとは、それを上回るスペック、例えば48kHz/24ビットとか、96kHz/24ビット、あるいは192kHz/24ビット等の音源を、一括りにハイレゾ音源と呼んでいる。ちなみに「/」の前がサンプリング周波数、後がビット語長(ビット数)を表している。

ではでは、ハイレゾ音源の特徴とは何か。高分解ということから想像がつくように、同じアナログ音楽ソースを44.1kHz/16ビットでデジタル変換したものと、96kHz/24ビットでデジタル変換したものを比べると、密度やきめ細かさが断然違う。喩えが妙かもしれないが、木綿豆腐と絹ごし豆腐くらいの質感の差があると思っていただければよい(この場合、舌触りとして木綿の方が好き、とかいう嗜好は加味しない)。

よくいわれることだが、ハイレゾ音源は、音楽の制作現場の音がそっくりそのまま楽しめる点に最大の魅力、セールスポイントがある。スタジオ等では、CDのスペック以上の変換精度で演奏が収録されており、これまでは、CDというフォーマットにそれを収めるために“グレード・ダウン”処理をしていた。ハイレゾ音源は、グレード・ダウンをせずに最高スペックのまま我々エンドユーザーに演奏が届けられるのである。

そうした音の密度の違いは、再生音の違いとしてどう現われるのか? 当然ながら、声や楽器の質感の違いに現われる。端的に言えば、ハイレゾ音源の方が一般的にはより生に近いというか、リアルだ。声ならば、温度感や湿り気、ヴィブラートや語尾のアクセントなど、微かなニュアンスが一段と克明になる。楽器ならば、響きや音色の微細な変化、タッチの違いや強弱なども敏感に再現される。一般には、サンプリング周波数が高ければ高いほど、ビット数が大きければ大きいほど、より生音に近づくと言っていいだろう。

もうひとつ重要な要素は、空間再現力の違いである。演奏が行なわれている現場(スタジオやホール等)の大きさや広さ、反射や残響などが再生音からイメージできそうな感じは、ハイレゾ音源の方がより鮮明に感じられることが多い。再生音の立体感や臨場感に差が現われる。

先日とてもおもしろい経験をした。スピーカーによってハイレゾ音源らしさに差が出るのである。つまり、わかりやすさが違うのだ。大型スピーカーの方が低音の迫力やエネルギー感では勝っていたが、生っぽさやきめ細かさという点では、小型のスピーカーの方がずっとハイレゾ音源らしい再生音だったのである。

この結果から、大型スピーカーよりも小型スピーカーの方がハイレゾ音源の再生に向いていると決め付けるのは、いささか乱暴というか、性急過ぎる。ユニット構成やエンクロージャーの方式、または形状によって、その辺りは大きく違ってくるはずだ。

しかし、優位性、有利性という面から、かなり高い確立で言えることは、小型スピーカーの方が、ハイレゾ音源特有の空間再現が得意ということ。これは、バッフル板やエンクロージャー全体から受ける影響の少なさから、小型スピーカーの方がハイレゾ音源らしさをスポイルする要素が少ないということが考えられる。

もうお気付きのことだろう。イクリプスTDシリーズのスピーカーは、ハイレゾ音源との相性が抜群だ。それは私が日々実感しているのである。