卵型が醸し出すオーラ/小原 由夫のサイト・アンド・サウンド(Ver.2:第3回)

イクリプスTDのスピーカーは、いずれも卵型のエンクロージャーを採用していることはご承知の通り。「エッグシェル・コンストラクション」というそれは、徹底した振動抑制の末に辿り着いた究極の形といってよい。

では、なにゆえ卵型なのだろうか?

イクリプスTDシリーズスピーカーがモチーフにしたのは、正確には鶏卵であろう。この形は高い強度を有しているのが特徴で、内側からは雛のクチバシで簡単に割れるが、外側からは大きな力が部分的にでも加わらない限りなかなか割れない。これはその曲面(カーブ)と大きく関係している。卵の形状には、平行面や同一半径面が存在しない。つまり、外から一定方向に圧力が加わっても壊れにくいのである。これが薄い殻でも強い強度を維持しているキーポイントなのだ。

平行面や同一半径面がないということは、実は音響的にも非常に有利。内部で発生した音響エネルギーが何度も跳ね返って増幅される、いわゆる定在波になることがなく、角がないから回折現象も発生しない。今日でこそラウンドした曲面エンクロージャーが一般的になってきたが、かつての箱型スピーカーは、某かの共振や振動を伴っていた。それが一種の「味」や「魅力」にもなっていたわけだが、音楽信号の忠実伝送を目標としたイクリプスTDシリーズスピーカーのコンセプトには、エンクロージャーの共振や振動は相容れない要件だ。それゆえイクリプスTDシリーズスピーカーの理に適った形が、卵型だったといえるのである。

ただし、卵型がいくら強いとはいえ、実際に薄い素材では、スピーカーユニットの背圧や振動に耐え切れない。TD712zの場合、人造大理石と同等の強度を持つBMC(バルク・モールド・コンパウンド)が採用されている。650トンもの圧力にて射出成形されたその厚みは、実に10mmにもなる。

イクリプスTDシリーズスピーカーのこの卵型エンクロージャーを眺めていると、アーティスティックインプレッションが刺激されたりしないだろうか。私はいろいろなアイディアが湧いてくるのだ。見る角度によって様々な表情を持つその姿カタチは、飛行機のジェットエンジンのようにも見えるし、弾丸のようにも見える。斜め下から見上げると、SF映画に出てくる異星人のように見えなくもない(真正面から見た時の、ゲゲゲの鬼太郎の目玉おやじというのは、あまりに在り来りなパターンです)。

また、TD510やTD307IIには、シルバー、ブラック、ホワイトの3色が用意されている。私はこのボディカラーにもっとバリエーションがあってもいいのではないかと思っている。あるいは、エンクロージャーにさまざまなペイントをしてみるのもおもしろいと思うのだ。

例えば往年のアメ車の名車「ポンティアック・ファイヤーバード」のボンネットにペイントされていたようなメラメラと燃え盛る炎を描いたり、第二次大戦時の米軍戦闘機「P-51」の側面に書かれていたサメの口のようなグラフィック、それともトリコロールやユニオンジャック、星条旗をコラージュしてみるなんていうのもおもしろいかもしれない。あるいは、1本足のスピーカースタンドをモチーフに、フラミンゴのようなピンク色の優雅なデザインを施してみても楽しそうだ。

どこかのグラフィックデザイナーやアーティストと組んで、イクリプスTDシリーズスピーカーのデザインコンペなんてやってみてはどうだろうか、富士通テンさん!?

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