AV(オーディオ・ビジュアル)界の目下最大の話題は、新しいサラウンドフォーマット「ドルビーアトモス」だ。音響設計に、“オブジェクト”と“レンダリング”という新しい概念を採り入れ、天井に据え付けたスピーカーから特定の音を再生することが特徴だ。

これまで同規格は映画館で運用されてきたが、この秋、遂に民生機にも採用されることとなった。ドルビーアトモス対応AVアンプが複数の日本メーカーからリリースされたのである。

民生用のドルビーアトモスも、映画館と同じく天井にスピーカーを固定する方式を採っているが(天井に取り付けられないユーザーのために、天井に向けて音を反射させる『ドルビー・イネーブルド・スピーカー』という方式も提唱されている)、現在はAVアンプのデコード能力の制限や内蔵可能なパワーアンプのチャンネル数の限度もあって、最大2組/4本のスピーカーが運用されるケースが多い。つまり、天井に4本のスピーカーを固定するスタイルである。

私は、ドルビーアトモスの認知が広がれば、ECLIPSEスピーカーが再び脚光を浴びるのではと思っている。というのも、5.1chスピーカーと 同様に、天井スピーカーにも十分な再生能力が要求される上、一般家庭では天井に大きなスピーカーを取り付けるのが困難なため、ECLIPSEスピーカーのコンパクトさが受けると思うのである。TD307MK2ATD508MK3辺りがちょうど良いサイズだろう。

一般家庭の石膏ボード、あるいはそれに類した天井に、10kg前後のスピーカーを固定するのは、なかなか困難だ。万が一の落下時には非常に危険である。そうした点では、シーリングまたはインウォール型スピーカーが堅実な選択と思われるが、そうしたスピーカーの取り付けには、専門知識をベースとした特別な工事やノウハウが必要だ。

TD307MK2Aの質量は、1台で2kgに満たない。TD508MK3でも、3.5kgである。しかも、ベース部に固定用の取付穴があらかじめ設けられており、落下防止機構も付いている。こうした機能を活用すれば、一般的な四角いスピーカーに比べて、天井スピーカーの取り付けがずっと現実味を帯びてくるわけだ。なおかつ、この2モデルは、天井にベースを固定した状態で、本体をほぼ真下に向けることが可能である(TD307MK2Aで最大90度、TD508MK3で最大75度)。

一方、TD307MK2Aを5本セットにし、TD316SWMK2と組み合わせたパッケージシステム「TD307THMK2」も新たに製品ラインナップに加わった。昨今のディスクリートサラウンドは、全チャンネル(スピーカー)にまったく同じ仕様が与えられているので、全スピーカーを同一モデルで組むと、音のつながりや包囲感、再生音の質感の統一が図りやすい。そうした点では、5.1chパッケージの「TD307THMK2」は、その小ささと値頃感で打ってつけといえるだろう。

この5.1chパッケージシステムを用意し、 状況に応じてTD307MK2Aを買い足していってドルビーアトモスの天井スピーカー対応を図っていくというアプローチは、同規格が持つポテンシャルをフルに楽しめるという点でも賢明かと思う。

実は斯くいう私も、アトモス用として自宅仕事場の天井に、TD508MK3をちょっと工夫して4本取り付けようと画策しているところだ。その実験結果は、追ってまたご報告するとしよう。