内外の多くのオーディオメーカーから、さまざまなタイプのサブウーファーが発売されている。エンクロージャー形式を見ても、密閉型にバスレフ型があり、さらに駆動方式で分類すれば、MFB型やアイソバリック型など、まさしく多士済済だ。大口径ウーファーで朗々と空気を掴んで動かすモデル、比較的小さなウーファーを2個以上使って効率よく低音を繰り出すモデルなど、サイズもいろいろ。一体全体、どの形式/方式が優れているのか、なかなか判断つかない。

最近、そこに「DSP」(デジタル・シグナル・プロセッサー)」を搭載し、定在波補正や室内の音響特性に応じて周波数イコライジング補正を行なうモデルが登場し、話題を集めている。付属マイクを使って計測するこれらの機器は、オン/オフによるパフォーマンスの変化は非常に明確だ。

ただしこの方式は、サブウーファーを実際の使用環境にいわば“慣れさせる”ための手段であり、サブウーファー単体の性能向上とは少々ベクトルが異なる。得られるメリットの反面、歪みや過渡特性が増大というデメリットも無視できない。

ECLIPSEの一連のサブウーファーは、DSP方式は採用していない。それは、前述した歪みや過渡特性を製品コンセプトとして最重要視しているからである。具体的には、入力信号に忠実なレスポンスと、遅れ要素のないハイスピードな反応(トランジェント性能)を強く意識しているのである。

一方で、サブウーファーに“MUSIC”や“MOVIE”など、ソフトに応じた再生モードが備わっているものがある。果たしてユーザーは、それを適宜切替え、使いこなしているのだろうか。翻って、映画向きの低音とか、音楽にマッチする低音はあるのだろうか。

そうしたポジションでは、異なるイコライジング特性だったり、カットオフ特性をズラしたり、音圧レベルそのものを変えたりしているケースがほとんどだ。こうした各設定は、使いこなしのできるユーザーならば自分で行ない、それをメモリーして使い分けていることだろう。私は、このような再生モードは、そうした使いこなしが面倒な(またはできない)ユーザー向けの、メーカー推奨(リコメンド)ポジションとして理解している。

ECLIPSEのサブウーファーは、そうしたメモリーは備えていない。ましてや、再生コンテンツ毎のモードすらない。それは、ソフトに収録されている低音を素直に、ストレートに再生することが大切と考えているからだ。

BD映画ソフト「トランスフォーマー/ロストエイジ」には、随所に凄まじい重低音が収録されている。これを集合住宅に住むユーザーが十分な音圧感で楽しもうと思ったら、近所から白い目で見られることを覚悟しなければならないだろう。

しかし、ECLIPSEのサブウーファーを使えば、最悪の近所付き合いは避けられるかもしれない。「R2R TWIN DRIVER」構造により、ウーファーの前後運動を助けるアルミシャフトによって2基のウーファーが連結されており、その同相駆動が双方の振動を反作用として相殺する。さらにウーファーのエンクロージャー固定方法も、特殊素材で支持することで不要振動を極限まで抑制している。その結果、エンクロージャーに振動が伝搬しにくく、切れのよい、スピード感に溢れた低音が繰り出される。これが振動を床や壁、建物の矩体に伝わりにくい秘密なのである。

「トランスフォーマー~」のチャプター14、宇宙船からの強力な磁力によってクルマやタンカーを吸い上げ、それを地面に叩きつけるシーン。その地響きの轟音にはヘヴィな重量感があるのだが、ECLIPSEのサブウーファーでは、決して引きずったり、鈍ったりした重低音ではなく、地響きがクリアーかつ適度な余韻を伴って広がる。実にスムーズかつタイトな重低音だ。

この再生では、AVアンプの「ローパスフィルター」(高音域をカットし、低音域のみを通過させる)が動作しているわけだが、一般のサブウーファーでは、自身に内蔵したローパスフィルターとAVアンプ内蔵とのそれが2重に重なることになり、過渡特性を悪化させている。これを未然に防ぐべく、ECLIPSEのサブウーファーは、ローパスフィルターのバイパススイッチを装備している。これを使うことでECLIPSEのローパスフィルターはスルーされ、AVアンプ側のローパスフィルターのみが機能し、低音の遅れを最小限に止めることができるのだ。

ステレオ再生では、例えば昨年大ヒットしたダフトパンクの「ゲット・ラッキー」でECLIPSEならではの切れのよい、ハイスピードな低音が堪能できる。

25cm口径というと、他社のサブウーファーと比べるとやや小口径に感じるかもしれないが、それをダブルで、しかもケブラー繊維混抄の振動版と、それにマッチングさせた密閉型のエンクロージャーとの抜群のコンビネーションが、ダフトパンク特有の強力なビートをいささかも緩めずにダイレクトに再現するという印象だ。その結果、ソウルフルなヴォーカルとシンセサイザーのメロディー、ギターの軽快なカッティグリズムがくっきりと浮かび上がってくるのだ。

付帯機能によるサブウーファーの提案を否定する気持ちは、もちろん筆者にはない。基本性能を重視し、低音の質で勝負するECLIPSEのサブウーファーのよさを再認識していただけたらと思う。